Last Updated:
06/15/2002
The Citadel of the Autarch (1982, Timescape Books)
「独裁者の城塞」 岡部宏之訳、早川書房、昭和63年、ハヤカワ文庫SF763
ジョン・W・キャンベル記念賞受賞、ネビュラ賞候補、ローカス賞ファンタジー部門候補、ローカス賞SF部門候補
<拷問者組合>を追放され、流刑地スラックスからも逃走したセヴェリアンは、今また黄昏に沈む惑星ウールスの荒野を旅していた。やがてセヴェリアンは、兵士の死体に行きあたった。途方もない霊力と英知を秘めた宝石<調停者の鉤爪>をもちいて兵士をよみがえらせたものの、セヴェリアン自身が病に倒れてしまう。熱にうかされた夢のなかで、彼は自分を待ちうける不思議な運命の片鱗を目にした---だが、すべての謎を解く鍵は、セヴェリアン自身に隠されていたのだ!全SF界の絶賛を浴びた≪新しい太陽の書≫が、宇宙的規模の壮大なクライマックスを迎える堂々の最終巻!--「独裁者の城塞」表紙裏紹介文より
ペルリーヌ尼僧団を求めて北にやってきたセヴェリアンは、いつしか<共和国>とアスキア人との戦場に入っていた。<鉤爪>の力で一人の兵士を死から復活させたセヴェリアンは、兵士とともにやっとのことでペルリーヌ尼僧団の避病院にたどり着いた。そこでセヴェリアンは、負傷した兵士たちや、アスキア人兵士の捕虜と出会った。病室で、傷病兵のハルヴァード、メリト、フォイラ、それにアスキア人が語る物語に、セヴェリアンはウールスのいまだ知らぬ地域のことに思いをはせた。その後セヴェリアンはついに<鉤爪>を尼僧団に返還した。
セヴェリアンはペルリーヌの監督尼から、ある依頼を受けた。迫りくる戦火から、近くに住むある隠者を助け出してくれというものだった。アッシュ師という隠者の家は通常の時空とは異なる場所にあった。アッシュ師は、<新しい太陽>が訪れず、ウールスが氷に包まれた未来からやって来た人物なのだった。いやがるアッシュ師をセヴェリアンは無理に連れ帰ろうとするが、その途中、自らの属する時間線から離れすぎたアッシュ師は消滅した。
セヴェリアンが戻ってみると避病院は戦闘によって破壊され、傷病兵たちも死んでいた。ひとり戦場跡をさまようセヴェリアンは不正規軍の一隊と出会い、その仲間入りをすることになった。一隊はアスキア人との戦闘に突入し、セヴェリアンは負傷して戦場に取り残されるが、独裁者に救い出された。独裁者は、セヴェリアンが組合の徒弟の頃からセヴェリアンを見守っていたこと、セヴェリアンが自分の後を継ぐべきことを告げるが、結局二人はアスキア人と同盟を結ぶヴォダルスに捕えられてしまった。捕らわれの身のセヴェリアンは独裁者の指示によりその脳を食べ、次代の独裁者となった。
かつての組合の師匠マルルビウス師の姿をとったアクアストルらの力によりセヴェリアンはアスキア人のもとから救い出された。マルルビウス師からウールスと宇宙と時間に秘密を教えられたセヴェリアンは、自らのの果たすべき使命、<新しい太陽>をウールスにもたらすために、再びネッソスと城塞への帰還の途についた。