ultan.net: 作品紹介

Last Updated:

06/30/2001




Galen Strickland 氏による作品紹介(その2)

初期作品のうち最良のものはナイトのオリジナル・アンソロジー・シリーズである「オービット」に掲載されていた。1970年の長編第一作 "Operation ARES" は、出版社から相当の直しを求められたこと、ウルフの後期作品に見られる力強さがほとんど見られないことから、不運なデビュー作となったが、1972年の長編第二作 "The Fifth Head of Cerberus" は前作の欠点を補って余りあるものだった。この作品は実際には中篇三つからなっている。各々の中篇は関連のある物語を別々の登場人物の視点から語るが、いずれもアイデンティティと記憶の主題を掘り下げている。この主題はウルフのキャリアを通じて繰り返しあらわれることになる。

The Fifth Head of Cerberus

最初に読んでから25年がたち、その間にSFに限らず多くの小説を読んできたが、 "The Fifth Head of Cerberus" の表題作は今でも私がもっとも好きな短編小説の一つだ。これは二つの惑星を持つ遠い世界に住む若い男の物語だ。読者はゆっくりと、彼はクローンであり、おそらくは同じ「父親」から生まれたたくさんのクローンの一人だと知らされる。男は「父親」を殺害するが、その後「父親」の作品を再創造しようと試みる。物語はこれまで読んだ中でもっとも忘れがたく、また(今にいたるまで)もっとも幻惑される文章で幕を閉じる。二番目の中篇(John V. Marsch の語る "A Story")では星系の二番目の世界に住む、自らの形態を変える能力を持つ種族がかかわってくる。彼らは自分たちの世界にやってきた人類の探検家を皆殺しにしたかもしれないと示唆される。三番目の中篇 "V.R.T." では人類学者が第一の世界に戻り、植民者たちを虐殺した罪を償うために先住種族は自分たちの外見を人類の形態に作り変えたとの学説を示す。しかしよく考えてみると、虐殺されたのは先住種族の側だったと仮定することも不可能でない。さらに人類学者その人が先住種族の一員だとの可能性もある。

ほとんど潜在意識レベルまで絶え間なく注意をはらうことを求める、そんなジーン・ウルフの小説の難解さがここに初めてあらわれている。しかし後から振り返り、再読を重ねると、必ずと言って良いくらいに理解を助ける明確な鍵がテキストの中に隠されている。-- John Clute, The Encyclopedia of Science Fiction

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