ultan.net: 作品紹介

Last Updated:

06/30/2001




Galen Strickland 氏による作品紹介(その3)

1970年代を通してウルフは、おそらくジェームズ・ティプトリー・ジュニアを除いてはもっとも多作な短編SF作家だったと思われる。作品はジャンル内のほとんどの雑誌と想像しうる限りのオリジナル・アンソロジーに発表されている。ウルフはまた、先の "The Fifth Head of Cerberus" の例でもわかるように、一連の作品が構造的、主題的に鏡像となっているようなシリーズを偏愛している。別の一群の作品はアイデンティティを主題とし、また「島々」を共通のメタファーとして用いており "Wolfe Archipelago" として知られる。個々の作品は完全に独立しており、また発表の場もばらばらだが、それぞれを全体を構成する部分として示す意図は明らかである。"The Island of Doctor Death and Other Stories" では、ある少年が過酷な大人の世界の現実から逃避して、パルプマガジンで読んだ小説から生み出された想像世界に引きこもる。"The Death of Dr. Island" では精神傷害の治療のために、彼の精神状態に反応する人工環境に隔離された子供の物語である。"The Doctor of Death Island"の主人公は低温睡眠状態におかれた囚人だが、目覚めると自分が世界から隔絶されており、また見たところ不死であることに気がつく。彼は前二作の主人公と同じ人物なのかもしれない。もちろんウルフの作品では絶対確実なものなど存在しないが。

The Island of Doctor Death and Other Stories and Other Stories Storeys from the Old Hotel Endangered Species Castle of Days Strange Travelers

このシリーズのもともとの作品集は "The Death of the Island Doctor" だが、この本は絶版となっており、実際私は現物を見たことはない。一方 "The Island of Doctor Death and Other Stories and Other Stories" というタイトルの別の短編集が後に出版された。こちらにはシリーズの最初の三つの作品と、他の11の短編が収められている。"The Death of the Island Doctor" 自体は "Storeys from the Old Hotel" に収録されている。ウルフの他の短編集としては、"Endangered Species", "Castle of Days" がある。後者はそれ以前に出版された二つの作品集、"Gene Wolfe's Book of Days" (主要な休日に関する物語のコレクション)と "The Castle of the Otter" (詳細は後述)、それに作家や小説作法等に関するエッセーをまとめたものである。最近 "Strange Travelers" という作品集も出版されている。

The Devil in a Forest Peace

ウルフの作品のベストな何かと問うのは意味のない設問だ。私ならたまたまその時に読んでいる作品がそうだ、と答えそうになるだろう。一方普通の読者にとってもっとも取っ付き易い作品となると、1976年の "The Devil in a Forest" だろう。この作品にはほとんど奇想天外な要素は見られない。これは本質的には中世イングランドを舞台にしたジュヴナイル小説で、主要登場人物の一人はおそらくロビンフッド伝説のもととなった人物である。1975年の "Peace" はおそらく文字通りウルフのもっとも個人的、かつ入り組んだ物語であり、時として欲求不満を引き起こすものだ。物語を通してしばしば語り手は(再読後に私は語り手があの世から読者に語りかけていることに気がついた)読者にもう少しすれば全てが明らかになる、との期待を抱かせるが、不可解にもその謎は宙ぶらりんになり、何章も後にならないと明らかにならない。またぼけた老人のたわごとなのか、夢の啓示なのか、それともこれがありそうだが、幽霊や精霊たちは実際に彼の現実世界に存在するのかを判別するのは最初は容易ではない。ウルフのスタイルは単語と名前の用い方にまずはっきりあらわれているが、また作者は時として読者を引っかけるトリックスターの役をわざと演じている。ウルフは作品のあちこちに遠慮がちにヒントを散りばめる達人だが、これらのヒントは後から考えるとなぜ最初気づかなかったか不思議に思われる類のものである。最近の "On Blue's Waters" の書評の中で、ジョン・クルートはこう語っている。

「・・・これまで一度たりとも単純明快な物語を語ったことはなく、一語たりとも不注意な単語を出版したことのない作家。」

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