ultan.net: 作品紹介

Last Updated:

06/30/2001




Galen Strickland 氏による作品紹介(その4)

1975年頃、ジーン・ウルフは "The Feast of Saint Catherine" という仮題の小説を書き始める。これはおよそ40,000語の中編小説になる予定で、ウルフはデーモン・ナイトの「オービット」に掲載するつもりだった。これは遠未来の地球を舞台とし、「真理と悔悟の探求者」として知られる拷問者組合の徒弟の物語だった。主人公の運命は、自分の住まう監獄に収監された貴婦人の死とともに変転する。彼は貴婦人と恋に落ち、理性と組合の規則に反して、彼女の嘆願に屈して自殺の手段を与える。物語が終盤にさしかかり、ウルフはジレンマに直面する。プロットの一部が解決困難であるとわかり、また彼のつくりだした世界はもっと詳細に語られるべきだと思われたのだ。そこでウルフはこれを長編にすることにしたが、他の作家がしばしば発見するように、ウルフもまた物語というものはそれ自体が生きているものだということを知ることになる。150,000語を書き上げた時点で、ウルフは物語が三部作の長さが必要だと認めざるをえなくなる。

The Shadow of the Torturer The Claw of the Conciliator The Sword of the Lictor The Citadel of the Autarch Shadow & Claw Sword & Citadel

運悪くも、後に「新しい太陽の書」として知られるようになる作品は結局四部作となった。各巻は1980年から3年間かけて出版され、全体ではほとんど500,000語の長さに達した。各タイトルは「拷問者の影」「調停者の鉤爪」「警士の剣」「独裁者の城塞」である。物語の主人公である拷問者セヴェリアンは、自らの罪により組合を追放され、最初の舞台であるネッソスの城塞から数百マイル北方にあるスラックスの町の警士、すなわち首切り役人に任命される。旅の途中セヴェリアンは大勢の魅力的な人々に出会う。何人かは後にセヴェリアンの親族だと判明する(当初読者はセヴェリアンは天涯孤独の身だと信じさせられている)。セヴェリアンは完全な記憶の持ち主であり、従って読者は道中彼が考え、感じ、また見聞きするあらゆるものごとを知ることになる。あまり自明でないが、この物語の一つのポイントは、セヴェリアンが大変嘘をつくのが上手だということである。

一見したところ、あるいは最初のうち読んでいる最中でも、この作品はトールキン、エディスン、ピークの伝統にならったヒロイック・ファンタジーに分類したくなる。だがだまされてはいけない、これはまぎれもなくSFである。注意深く読めば、あちこちに物語の舞台が遠い未来、ひょっとしたら数百万年未来であることが示唆されている。舞台は何光年も彼方の想像上の惑星でなく、セヴェリアンの時代にはウールスと呼ばれる地球の、現在は南アメリカと呼ばれる場所である。セヴェリアンの知識のおよばない、あるいは読者がそう信じさせられる、多くのテクノロジーがありこちに見られる。高貴な人々は空飛ぶ機械に乗り、遺伝子工学により地球の生物と外世界の生物が混ぜあわされて全く新しい生き物が創造される。また知的な異星人はそこら中に見られるので、セヴェリアンはいちいち彼らに言及もしない。セヴェリアンの親友の一人は、もともとロボットのような機械であり、事故で失った部分を生物組織で置き換えた、言わば逆サイボーグのような存在であることがわかる。私はこの作品を再読し、またアルジス・バドリスの書評で読むまで、セヴェリアンが生涯のほとんどを過ごした<剣舞の塔>が古代の宇宙船の名残だと気がつかなかった。

The Urth of the New Sun

この主題については何ページ書いても書きたりないだろう。さまざまな事件や登場人物をいくら語っても、このプロットの複雑さを語り尽くすことはできないだろう。この作品が私にどんなに畏敬の念をかきたてるのか、いかに強調してもしたりない。これまで私はこれを四回読んだが、これからも再読することは間違いない。それに1987年に出版された後日談、"The Urth of the New Sun" についてはまだ話していない。これは130,000語の長編で、さらに後続作品の可能性も予感させる。ここでF&SF誌の1981年6月号に掲載された、アルジス・バドリスによるシリーズ第二作の書評を引用しよう。

一つの文学作品としてこの作品はまったくすばらしいものだ。注意してほしいが、小説を書く技能の点でも、文学性の点でも、我々がここで話している属性は、散文として世界最高クラスのものだということであり、「単なる」SFの中で最高だと言っているわけではない。いわゆる「ジャンル」SFが必ずしも狭いジャンルの基準にとどまる必要などないと証明するには、これで十分だ。我々が待ち望んでいたのは、単に有能かつ才能に恵まれた実践者だった、ということはもはや疑いもない。

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