ultan.net: 新しい太陽のウールス

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04/13/2002




物語は、独裁者になってから10年後、セヴェリアンが<新しい太陽>を求めるために乗りこんだ船ツァドキエル(Tzadkiel)号で幕を開ける。旅の途中に、かつての手記(<新しい太陽の書>四部作)を再度書き記したセヴェリアンは、かつて心に決めた通り、手記を鉛の箱におさめて時空の海に流すことにした。(ちなみにセヴェリアンがこの本――The Urth of the New Sun――自体、つまり新しい、別の手記を書いているのはそれからはるかに未来のこと)

船外のデッキには、それぞれが何千枚もの煤色と銀色の帆を張った数え切れない巨大なマストが連なり星がほとんど見えないほどだった。マストを上って手記の箱を時空の海に放った後船内に戻ったセヴェリアンは、ブロンドの男パーン(Purn)、皮膚も髪の毛も真っ白な男イダス(Idas)、がっちりしてセヴェリアンとほとんど同じ背丈の女、通称ガニー(Gunnie)ことバーガンドファラ(Burgandofara)、それに彼らのリーダー格の機械人シデロ(Sidero)の四人の船員に出会った。なぜかガニーはセヴェリアンに短いが情熱的な口づけをした。成り行き上セヴェリアンは、船員たちが<アポート>(apport: 「物品引き寄せ」を意味する心霊現象用語。へトールが鏡を使って怪物を引き寄せたように、隣り合った二枚の帆が作る鏡面の対に、どこからか引き寄せられてくるためにこう呼ばれる)と呼ぶ毛むくじゃらの生き物を捕獲するのに協力することになった。

自分の船室が見つからないまま、ガニーの船室のそばの空き部屋にひとまず身を落ち着けたセヴェリアンの耳に、船内シャフトの下層からなにものかの孤独な叫びが届いた。下層に降りてみると、さまざまな生き物が目に見えないフィールドで閉じ込められた生態園があった。セヴェリアンが耳にした叫びは、先ほどの<アポート>のものだった。パーンとイダスが現れセヴェリアンと会話するが、セヴェリアンは船内生まれだと称するイダスの話し方に不審をいだいた。

偶然本来の船室に戻ることができたセヴェリアンのもとに、なつかしい神殿奴隷(ヒエロドゥール)のオッシパゴ、バルバトゥス、ファミリムスの三人が訪れた。セヴェリアンにとっては10年ぶりの再会でも、時間を逆行する三人にとってはセヴェリアンは初対面だった。三人の船室に招待されたセヴェリアンは、船と同じツァドキエルという名の神聖書記(ヒエログラメート)が、イエソドでセヴェリアン、そしてウールスの審判をおこなうことになるときかされた。(神聖書記は神殿奴隷の上官にあたる)

三人と別れて自室に戻ってみると船室の前でセヴェリアンの執事が殺されていた。セヴェリアンは思わず<鉤爪>――もともとの<鉤爪>でなく、マルルビウス師のアクアストルと別れた浜辺でセヴェリアンの腕に刺さった棘――を使って甦らそうとするとするが、とたんに激しい苦痛に意識を失った。闇の中で意識を取り戻したセヴェリアンは避難所を求めて生態園にたどりつくが、何者かと格闘になり、毛むくじゃらの生き物の助けでなんとか撃退した。その際敵は手に負傷した。

セヴェリアンの船室では暗闇の中でイダスが待っていた。船内に明かりが戻った瞬間イダスはセヴェリアンにおそいかかるが、これを予期していたセヴェリアンに返り討ちにあった。セヴェリアンがイダスのシャツを引き裂くとそこには娘の胸があった。実はイダスは成長の初期段階にあるアバイアの女奴隷で、セヴェリアンを暗殺して<新しい太陽>の到来を阻止するために船員を装っていたのだった。セヴェリアンによる尋問の最中にイダスは毒を飲んで自害するが、ウールスのアクアストルから神聖書記にあてた手紙――セヴェリアンの身元を証する手紙――はイダスによって焼き捨てられていた。

船の船長に事態を報告して自分の身元を証明しようとするセヴェリアンの前に、ジャイバー(jibers)と呼ばれる者たちとの戦闘で傷ついたシデロが現れ、セヴェリアンに壊れた身体の修理を依頼した。シデロの身体は空洞になっており、中に人間がすっぽり入れるようになっていた。シデロの種族は、はるか昔に宇宙服=装甲服から進化したものだったのだ。セヴェリアンはシデロをだまして空洞の中に身を隠す(シデロを装着する)が、戦闘に巻き込まれ、シデロの中に入ったままエアシャフトを落下して意識を失った。薄れる意識の中でセヴェリアンは、ヴァレリアやドルカスとともに、かつてイナイア老の本の中に見た翼を持った女の姿を見た。前の独裁者と、それ以前の全ての者たちが、次の者を探せと言った。機械の間に頬に傷のある死体があった。

気がつくとシデロの姿はなく、セヴェリアンのそばにはガニーと、ザク(Zak)と言う名の小びとがいた。ザクが気を失ったセヴェリアンを見つけ、ガニーとともに看病をしていたのだ。ジャイバーとは何者かとのセヴェリアンの問いにガニーは答えて言った。船はあまりに大きく、船員もあまりに多いので、航行の間にいなくなったり、罪を犯して逃げたりするものがいる。そういった反乱者とその子供たちがジャイバーの起源だと信じられている。おそらくザクもその一人なのだろう。セヴェリアンとガニーは愛を交わすが、実はガニー自身がイダスのセヴェリアン暗殺計画の手助けをし、その際セヴェリアンのピストルの光線で重傷を負ったことが明らかになった。セヴェリアンに気づかれたことを悟ったガニーは姿を消した。

翌朝セヴェリアンが目をさますとパーンら船員たちがジャイバーと闘っており、セヴェリアンとザクは船員たちと行動をともにすることにした。パーンの手に傷あとがあるのを認めたセヴェリアンが尋問するとパーンは言った。セヴェリアンが<新しい太陽>をウールスにもたらそうとする独裁者であるがゆえにセヴェリアンを殺そうとしたのだ、ウールスの破壊と人々の大虐殺を防ぐために、と。呆然とするセヴェリアンを尻目にパーンは逃亡し、ザクもまた、自分があの毛むくじゃらのの生き物の変身した姿だとセヴェリアンに悟られたことを知り、身を隠した。セヴェリアンは一度はジャイバーたちに囚われるが、シデロたちに救出された。

シデロたちの一団の中には、今は普通の船員の姿に再度変身したザクや、ガニーもいた。シデロはセヴェリアンは狂人であり、「本物の」独裁者は安全に守られていると言った。不審に思いつつもセヴェリアンはシデロに率いられた船員に加わりジャイバーたちと戦った。船殻に穴があき、セヴェリアンたちは船外に投げ出されるが、そこでセヴェリアンが目にしたものは、宇宙の終わり、全ての太陽が一箇所に集まり、また新しい宇宙が生まれようとする姿だった(セヴェリアンたちの乗る船は時空の外側を航行している)。その宇宙、ブリアー(Briah)の外側に存在する明るい青い星――イエソド(Yesod)――に船は向かっているのだった。

船内に戻ったセヴェリアンは、ジャイバーとの戦いに勝利した船員たちの行列に遭遇した。行列の中にはイエソドからやってきた三人の男女と、背の高い虜囚――「本物の」独裁者――、それにパーンとガニーの姿もあった。一行がセヴェリアンの見慣れない船室に入ると、イエソドの女の一人が船員たちに語りかけた。ウールスの民は長く有罪とされてきたが、今許しを請うために使節をイエソドに送り込んできた、使節はイエソドの裁きの部屋で被告人席につくが、ウールス生まれの船員たちもまたウールスを代表して裁きの部屋に臨んでよい、と。セヴェリアンは自分こそが使節だと名乗りをあげようとするが、セヴェリアンをあわれな狂人だと考えたパーンとガニーに制止された。一行のいる部屋はそれ自体が飛翔機となり、イエソドに向かった。

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イエソド

飛翔機はイエソドの海に着水し、美しい小島に着いた。セヴェリアンは先ほどのイエソドの女アフェタ(Apheta)に話し掛けた。アフェタは自分たち自身は神聖書記ではなくその子供のような存在であると言い、ツァドキエルが裁きの部屋につくのは明日になるが、事前に審問できるよう、セヴェリアンに虜囚を被告人席まで連れていくよう求めた。裁きの部屋に向かう回廊のたくさんの窓からは、雪冠をいただいた山々や広いパンパ、それにアギルスの独房の中や剣舞の塔のセクラの地価牢などの見知った光景が見えた。セヴェリアンは虜囚の正体がまたもや変身したザクだと気がついた。

裁きの部屋では既に船員たちが待っていた。セヴェリアンは船員たちに、自分こそがウールスの独裁者であり、裁きを受けるべき者だと宣言すると、別の一団が裁きの部屋にやってきた。それはセクラ、アギルス、モーウェンナ、剣舞の塔やスラックスの囚人たち、アスキア人たち、イダス、キャスドーなど、セヴェリアンがこれまでにかかわり、何らかの形で苦しめたすべての人々だった。その中にはキャスドーの子供の声を持つアルザボの姿さえもあった。恐怖におびえた船員たちは、これらセヴェリアンの記憶から造りだされたエイドロン(eidolon)たちと戦いをはじめるが、セヴェリアンはアフェタに救い出された。

アフェタは<鉤爪>の力の源泉について語る。<新しい太陽>の招来に成功したならば、セヴェリアンはその力を自由に引き出す能力を得る。しかしこの能力は<時の歩廊>を通じて過去のセヴェリアンにも伝わったのだろう。おそらくセヴェリアンは自分自身とウールスと<古い太陽>から力を引き出して、死者を甦らせたのだろう。船の中で<鉤爪>を使った時には、船自体からパワーを引き出したために、あやうく船が破壊されるところだったのだ。セヴェリアンはアフェタの居室で彼女と愛を交わした。アフェタ、つまりイエソドの中に己を突き立てると、セヴェリアンの身体から何十億の星々が迸った。このイエソドとブリアーの交わりから生まれた新しい存在は、実は自分自身だとセヴェリアンは気づいた。翌朝、裁きの部屋に行く前にアフェタはイエソドの海に点在する島々を指し示し、セヴェリアンたちのいる島がウールスの属する銀河系を裁くように、島の一つ一つが別の銀河系を裁くのだと教えた。

翌朝、裁きの部屋の玉座についていたのはザクだった。セヴェリアンはザクこそがツァドキエルであり、またイナイア老の本で見た翼を持つ女でもあると知った。ツァドキエルは、裁きが既に終わっていること、セヴェリアン自身が<新しい太陽>であり、<白い泉>をウールスに持って帰ること、それにより言い伝え通りにウールスの大陸は海底に沈み、ほとんどの生き物は死に絶えること、そして大破壊の後に新しい世界が生まれることを告げた。

ウールス生まれの船員たちは怒り狂ってツァドキエルの神官ヴェナント(Venant)を殺害し、セヴェリアンにせまるが、あらわれたエイドロンたちがセヴェリアンを守って戦った。戦いが終わってエイドロンたちは消え、後には船員たちの死体と、ただ一人セヴェリアンに味方したガニーだけが残された。そこにアフェタが現れ、疑問の数々に答えた。さまざまな姿に形を変えるザク=ツァドキエルの能力は、セヴェリアン自身が将来そうなる姿の反映であること。セヴェリアンたちウールスの民だけではなく、神官や神殿奴隷、神聖書記たちもまた<新しい太陽>が到来してウールスが甦ることを切望していたこと。なぜならセヴェリアンの種族こそが将来イエソドの種族を作り上げる種族となるかもしれないこと。またツァドキエルは<新しい太陽>の到来により死にゆくウールスの人々の代表として船員たちを召喚し、被告側弁護人には、セヴェリアンを憎む理由のあるエイドロンたちを配することにより公平を期したこと。そして拷問者たるセヴェリアンだけが、過酷な運命をウールスとその人々にもたらすことがわかっていながらも、それをやり遂げることが可能であること。

セヴェリアンとガニーの二人が戻った船は、つい先日まで搭乗していた船とは異なる時空に属していた。グリムケルド(Grimkeld)という名の船員に連れられ、船長室に向かった二人は、翼を持った巨大な女の姿のツァドキエルに会う。セヴェリアンが裁きを受け<新しい太陽>をウールスにもたらすと知ったツァドキエルは、巨大な人差し指から自分の分身を作り、セヴェリアンを新しい船室に連れて行った。

翌朝セヴェリアンはガニーとガニーそっくりの若い娘が一緒にいるのを見つける。若い方のガニー(バーガンドファラ)はまだ船に乗り込んだばかりなのだった。混乱したセヴェリアンは二人に、かつて石の町でヒルデグリンたちとアプ・プンチャウを呼び出したこと、アプ・プンチャウの顔は年老いていたもののセヴェリアンに良く似ていたこと、そして今朝鏡の中に見た顔はまさにアプ・プンチャウと同じ顔だったことを話した。ガニーは自分の知っている二人のセヴェリアンについて語った。一人は顔に傷痕があり、脚をひきずった、ガニーが思わず口づけをしたセヴェリアン、もう一人はかつて自分が船に乗り込んだばかりの頃恋人となったセヴェリアン。その昔の記憶のためにガニーはセヴェリアンに口づけし、船員たちからセヴェリアンを守って戦ったのだった。

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ウールス

ガニーは船に残り、かわって若いバーガンドファラがセヴェリアンとともにウールスに帰ることになった。二人は「はしけ」の同じ船室を割り当てられ、自然に愛を交わした。自分の未来の姿ガニーに出会ったバーガンドファラは、生まれ故郷のリティ(Liti)に帰って父親に会うつもりだと言った。二人を乗せた「はしけ」はネッソスの南南西のヴィキ村(Vici)のそばに着陸するが、村の首長ブレグウィン(Bregwyn)の娘ヘレナ(Herena)に目撃された。セヴェリアンはヘレナの萎縮した腕を癒してやり、首長らの歓待を受けた。そこでセヴェリアンは村人たちに、ウールスは病んでいるが、それは空の人々がウールスの民を憎んでいるからではないこと、空の人々は遠い昔にウールスの人々がやったことのためにウールスの民を恐れていること、自分はウールスと他の宇宙との調停をおこなうためにやってきたことを語った。

翌朝セヴェリアンたちは、ヘレナや首長らとともに隣村のガーガスティ(Gurgustii)に向かった。ガーガスティでセヴェリアンは瀕死の男デクラン(Declan)を救うよう求められた。デクランのよこたわる真っ暗な小屋で、セヴェリアンは自分自身の中から弱い光が発しているのに気がついた。デクランを癒した後、セヴェリアンはここでも村人たちにウールスと他の宇宙との調停の話をきかせた。

翌日の夕方セヴェリアンとバーガンドファラは、ネッソスまで船で一日の距離にある町オス(Os)に着いた。宿屋に向かう途中二人は紫色と緑色のローブを身にまとった魔法使いセリックス(Ceryx)が聴衆を前に演説しているそばを通りかかった。セリックスはセヴェリアンが只者でないことに気がつき挑発するが、セヴェリアンは取り合わなかった。宿屋の食堂にはアルシオネ(Alcyone)号という船の船長ハデリン(Hadelin)がおり、翌朝二人を乗船させる約束をした。宿屋の部屋に入った二人の耳にほら貝の音と群集のわめき声が聞こえた。窓から外を見ると、先ほどのセリックスが棺を横に、自分にはこの死人を復活させることができる、と叫んでいた。セヴェリアンは彼を無視して窓のよろい戸を閉めた。

その晩、セヴェリアンたちはセリックスの甦らせた死人に襲われた。かけつけたハデリンや宿屋の主人の助けでセヴェリアンは死人を撃退するが、その直後死人はセヴェリアンの力によって本物の生命を取り戻した。ハデリンたちは恐怖に逃げ出し、バーガンドファラもまた、光を身体から発するセヴェリアンの姿に恐れおののいて去った。衝動にかられたセヴェリアンは窓から夜の町に出た。死から復活した男もまた何も言わずにセヴェリアンに従った。一人の老人が死から復活した男に呼びかけ、セヴェリアンは男の名前がザマ(Zama)だと知った。

翌朝セヴェリアンとザマが宿屋に戻ると、バーガンドファラとハデリン船長が一緒に朝食をとっていた。明らかに一夜をともにした二人は、セヴェリアンがザマに殺されたと思ったと言い訳した。一行が波止場でアルシオネ号に乗り組もうとしていると、またもや魔法使いセリックスが現れた。セリックスが呪文を放つとザマは再び死人の姿に変わるが、同時にセリックスに跳びかかり殺害した。セリックスの呪文が解けてザマは生者の姿に戻るが、恐怖にかられた群集に八つ裂きにされた。

アルシオネ号の上でセヴェリアンは、かつてセクラと読んだ茶色の本の挿話「フォーナを忘れた町の物語」を思い返した。

昔、九人の男たちが新しい都市を造る場所を探して川を遡っていた。長い旅の末に彼らはフォーナ(Fauna)という老婆が一人で暮らす場所に着いた。フォーナは男たちに食べ物を与えて歓待するが、男たちはこの場所が偉大な都市を造るのに最適だと気がついた。土地を手に入れるため、ある者は老婆を殺してしまえと言い、別のものはむりやり追い払うことを主張したが、男たちの長は信心深い者だったため、老婆に土地を売ってくれるよう申し入れた。老婆は金銭には耳を貸さなかったが、ついに、都市の中心に庭を造り、そこに自分の像をたてることを条件に、男たちに土地を明渡した。男たちは喜んでこれに応じ、家族をこの地に呼び寄せ、都市の建設をはじめた。約束通り都市の中心には庭が造られフォーナの像が据えられた。長い年月がすぎ、都市は大いに繁栄したが、老婆との約束は忘れ去られた。ある商人が庭を買い取り、古い像を壊したが誰も気にする者はなかった。やがて不作の年は続き、戦いが起こり、人々は去って都市は廃墟と化したが、今でも都市の中心の庭には一人の老婆が住むと言われている。

セヴェリアンは自分を慕うデクランとヘレナがこっそりとアルシオネ号に乗船しているのを知った。バーガンドファラとハデリンが一緒にいるのを見てデクランが憤慨するが、セヴェリアンは、気にしていないと言った。突然激しい嵐が船を襲った。デクランたちは、バーガンドファラを寝取られたセヴェリアンの船長に対する怒りが嵐を引き起こしたのだと信じ、セヴェリアンに許しを請うた。セヴェリアンは一笑に付すが、他の者たちがびしょ濡れになっている激しい雷雨の中で、自分だけが全く濡れていないことに気がついた。それとともに風雨はおさまり、セヴェリアンは自分がもはやウールスと一体の存在となったことを悟った。

やがて船はサルトゥスの町に着くが、それはかつてセヴェリアンがモーウェンナを処刑したサルトゥスの町とは異なっていた。宿屋に着いた一行のもとに兵士たちが現れ、自称調停者は誰かと問うと、バーガンドファラが立ち上がってセヴェリアンを指さした。セヴェリアンは抵抗して三人の兵士を殺すが、ついには捕えられ、兵士たちの船に連れて行かれた。ネッソスに向かう船上でセヴェリアンは、自分を捕える際に重傷を負ったエスキル(Eskil)という兵士を回復させた。驚いた士官がセヴェリアンの身体を調べ、傷がすっかり癒えているのを知った。

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ネッソス

士官はセヴェリアンを「老朽船」と呼ばれる場所に連れて行き、プリスカ長官(Madame Prefect Prisca)と呼ばれる女と、リーチー(Reechy)という徒弟の少年に引き渡して去っていった。突然セヴェリアンは自分が剣舞の塔に戻ってきたのに気がついた。自分の身に何が起こるか悟ったセヴェリアンは渾身の力をこめてプリスカの顎を突いて殺害するが、塔の上層からエネルギー銃で撃たれて気を失った。

意識を取り戻したセヴェリアンは、自分が入れられた独房が、かつてロッシュが職人だったころ使っていた部屋であるのに気がついた。独房にやってきた医師は、セヴェリアンが元気なのを見て、本当にエネルギー銃で撃たれたわけがないと考え、セヴェリアンがプリスカを殺したその時に大きな地震があったから、射手が狙撃しそこなったのだろうと言った。

翌朝セヴェリアンの独房をバーガンドファラとハデリンが訪れた。許しを請うバーガンドファラにセヴェリアンは、ガニーへの恩返しのために許しを与えた。二人が去った後、隣の独房からカノッグ(Canog)という学生が話しかけてきた。カノッグは強盗殺人の罪で囚われているのだった。晩には今度はヘレナ、デクランとアルシオネ号の船員の一人と船の料理人がやって来た。教えを請う四人にセヴェリアンは、死にかかっている<古い太陽>のこと、<新しい太陽>の訪れのことを話して聞かせた。<新しい太陽>がやって来た後ウールスに何が起こるのかと問われ、セヴェリアンはタロス博士の劇の引用をきかせた。四人が帰った後、隣の独房からカノッグが話しかけ、いつか釈放されたら今の物語を本にしようと言った。セヴェリアンは四人がナイフを密かに残していったのに気がついた。

翌日、セヴェリアンを迎えに来る近衛兵を待つ間徒弟のリーチーと話したセヴェリアンは、リーチーの本名がイマールだと知り、自分のいる時代がいつなのか悟った。やがて飛翔機が到着し、セヴェリアンを乗せて山岳地帯にいる支配者のもとへと運んだ。支配者はいまだ人の姿に変形されていない山の上の丸い建物の中にいた。赤い帳の中で待っていたのは双頭のテュポーンとピアトンだった。預言者である証を見せよと言うテュポーンにセヴェリアンは、目の前のテーブルを一打ちするだけで、自分を苛んだ連隊長を殺してみせようと答え、隠し持ったナイフをテーブルの上に放り投げた。

テュポーンに謁見する際セヴェリアンが武器を所持しているのを見過ごした咎で、連隊長はセヴェリアンの牢のそばの柱に吊るされ、その足もとには剣歯虎が繋がれていた。セヴェリアンは剣歯虎と連隊長をともに解き放ち、逃げるよう促した。テュポーンに代わってウールスの支配者になってくれと言う連隊長に、セヴェリアンは自分にはさらに大きな使命があると言い、叛乱軍に加わるために部下たちと逃亡する彼に、形見の品として<鉤爪>=棘を与えた。兵士たちと剣歯虎がともに去った後、セヴェリアンは<別の場所>が目の前の光景と同時に存在するのに気がつき、そこに足を踏み入れた。

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マドレゴット

そこは紺碧の空の下、花咲く緑の原だった。小川の水で喉の渇きをいやしたセヴェリアンが気づくと、目の前に翼を持った小さな女=神聖書記のツァドキエルの姿があった。このツァドキエルの分身は、セヴェリアンに出会う前に本体から分かれたものだったため、セヴェリアンは自分の全ての物語を話してきかせた。ツァドキエルは、セヴェリアンは使命を負っているが故に死ぬことができなかったこと、セヴェリアンの力は<新しい太陽>そのものに由来していること、二人の前の小川はイエソドからブリアーへと流れるエネルギーの流れ、マドレゴット川(Brook Madregot)であること、自分ははるか昔にツァドキエル本体から追放されてこの地に流刑の身にあることを語り、<新しい太陽>の到来する時点のウールスに至る道を教えた。

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絶対の家

次の瞬間セヴェリアンは、絶対の家の庭園の、自分自身の記念碑の前にいた。イナイア老の造った秘密の通路の中で、おそらく死んでから一年ほど経過した暗殺者の死体を見つけた。見つめるうちに暗殺者は甦ったが、セヴェリアンは彼を残して先を急いだ。ある開廊で女のすすり泣きを耳にして覗き見ると<空気の道>と呼ばれる回廊で漆黒の髪の女が何人かの近衛兵に囲まれていた。その美しい女はセヴェリアンに目をとめ、セヴェリアンは何故かはわからない胸のたかなりと、以前にも同じことがあったはずだとの既視感を抱いた。女の姿を求めてセヴェリアンは過去の独裁者の記憶、イマールまで、そして神話時代にまで記憶を遡った。女との邂逅の瞬間を特定することはできなかったが、その過去の全時代を通じて白い星=自分自身がウールスの太陽に向かって宇宙を突き進んできたのを知った。

セヴェリアンは秘密の通路を通って<不死鳥の玉座>の背後の綴れ織の裏側に着いた。セヴェリアンの身動きにより、かつてセヴェリアン自身がぶらさげた鐘が鳴り、その中にツァドキエルの笑い声が聞こえた。隙間から覗くと、玉座についた老女、近衛兵たち、傷ついた巨人、それにぼろをまとい杖をついた別の老女がいた。ぼろ服の女予言者は玉座の女独裁者に、鐘の音は<新しい太陽>を歓迎して鳴ったのだと言い、自分がかつて少女で病に苦しんでいた時にあらわれ、自分を癒した天使の手に見た<新しい太陽>が、今は天に輝いていると告げた。セヴェリアンはその場のやり取りが、かつてタロス博士の劇で演じた光景と全く同じなのに気づいた。

巨人もまた<新しい太陽>の到来を告げ、セヴェリアンはそれがバルダンダーズであること、玉座の主がヴァレリアであることを知った。バルダンダーズは<新しい太陽>=<白い泉>のもたらす重力波が海流を変え、冷え切っていた大地の中心に火をつけ、大陸を海の底に沈めることを告げた。その時、衛兵が、今度は裸の女の巨人があらわれたこと、その巨人が、退化人が一組の男女を船からおろしたと告げていること、また何人かの衛兵が<足萎えのセヴェリアン>を目撃したことを報告した。これを聞いてセヴェリアンは綴れ織の陰からおもてに出た。

長い歳月の間にバルダンダーズはセヴェリアンの倍の背丈にまで成長し、またその皮膚は水の精のように真っ白になっていた。<あばら家の少女>は六十代の老女となっていた。ヴァレリアもまた年老いていたが、その瞳は<時の広間>で出会った少女のままだった。その時、扉を押し開いて巨大な水の精が部屋に這ってきた。女の目と鼻腔からは血がふき出していた。それは、かつて少年時代のセヴェリアンが溺れるのを救った水の精だった。セヴェリアンがそれを指摘すると、その水の精――ジュトゥルナ(Juturna)――は、それは彼女にとってはまだ起きていない未来のことだと言った。ジュトゥルナはセヴェリアンや他の者たちを救いに来たと言い、訝るヴァレリアに、アバイアは人類をより偉大な生き物にしようとしているのだと答えた。これを聞いてセヴェリアンは、かつてファミリムスが語った言葉を思い出した。

ついに洪水が玉座の間にまで到達し、ヴァレリアはネッソスの町は二日前に水没したと言った。ジュトゥルナは泳ぎながら勝利と絶望の叫びをはなった。セヴェリアンはヴァレリアを連れて秘密の通路から脱出しようとするが、隠し扉を開けると、そこにはセヴェリアンの力で甦った暗殺者がおり、ヴァレリアの王冠を認めるや一瞬のうちに彼女を刺し殺した。

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ウシャス

既に大地は海の底に沈み、セヴェリアンは勝利と絶望を同時に感じつつ、<新しい太陽>の強烈な輝きの下で波間に漂っていた。あたりにはウールスの残骸がそこかしこに浮かび、その中に残骸をつなぎ合わせて作った筏があった。筏には太って禿頭の廷臣オディロ(Odilo)、人形のように愛らしい小柄な娘ペガ(Pega)、背が高く浅黒い娘タイス(Thais)の三人がのっていた。セヴェリアンは自分の身分を隠すが、オディロがかつて初めて絶対の家を訪れた時に会った執事オディロの息子だと知った。

その時、筏に近づいてくる小舟が見えた。四人は助けを求めて水にとびこみ、年老いた船乗りに助けられた。夜になり、これまでに見たことがないほど明るく輝くリュンヌ(月)を眼にして、セヴェリアンは古いウールスの世界が滅び去り、<新しい太陽のウールス>すなわち<ウシャス>の時代となったことを実感した。ひとりすすり泣くセヴェリアンに船乗りの老人が話し掛けてきた。よくよく見るとそれはかつてセヴェリアンと同様拷問者の徒弟だったイータだった。

イータはセヴェリアンが独裁者となった後のことを語った。イータはセヴェリアンと別れた後も度々マクセリンディスと会い、彼女の叔父や他の船乗りたちから船のことを教わっていた。自分が職人になる守護聖女の祭が近づいた時、イータは組合を捨てて船乗りとしてマクセリンディスと暮らす決心をし、逃亡した。やがてマクセリンディスの叔父が死に、二人は何年か一緒に暮らした。ある時、二人の船が禁制品を運んでいる時、取締りの役人に見つかった。マクセリンディスは河にとびこみ、イータは捕えられ、それがイータがマクセリンディスを見た最後だった。イータは裁判を受け、<黄金の国>(Xanthic Lands)に流刑になった。数年後、反乱が起き、イータが一緒に暮らしていた女が殺された。イータは<黄金の国>を離れることにし、たまたま<青花島>(Blue Flower Island)に停泊していた帆船に乗組んだ。<共和国>に戻ってマクセリンディスを探したが、どうしても見つからなかった。イータは小舟を手に入れ、それ以来ギョルで船乗りとして暮らしてきたのだった。

イータによると、セヴェリアンが宇宙に旅立った後、ヴァレリアが独裁者の地位を継いだ。やがて彼女は対アスキア戦争の司令官だったデュクス・カエシディウス(Dux Caesidius)と再婚した。人々はカエシディウスがセヴェリアンによく似た顔の持ち主だったのが理由だと噂した。

イータもまた眠りにつき、ひとり残されたセヴェリアンは、波間に子供の死体が漂っているのを目にし、その子供に引き寄せられるように水の中に入った。なぜか水の中でも溺れないまま深く潜っていくと、完全に水没したネッソスの廃墟があった。かつてギョルの川底だったと思われる場所の、岸から続く階段のそばに、はるか昔に死んだと思われる子供の頭骸骨が泥の中に沈んでいた。セヴェリアンは頭蓋骨を手に階段を上り、共同墓地の門を過ぎ、かつて組合の徒弟だったころに隠れ家としていた霊廟に頭蓋骨を安置した。

水面に戻るとイータの小舟の姿はどこにも見えなかった。セヴェリアンはその日とその晩を水面で漂ったり泳いだりしたが、不思議と疲れを感じることはなかった。翌朝昇った<新しい太陽>はあまりにも輝かしく、イエソドで見たどのような事物よりもさらにすばらしいものに見えた。遠くに水の精が見えたため、セヴェリアンはそちらに向かった。水底には今度はネッソスではありえない不思議な廃墟があった。建物の横木や基礎には見たことのない文字が書かれていた。水の精にさそわれるように水面に戻ると、草一本生えていない陸地があった。セヴェリアンはタロス博士の劇で悪魔が語った台詞を思い出した

大陸そのものがやつれ果てた老婆のように年老いて、とうの昔に美しさを失い、不毛になっています。<新しい太陽>がやってきて(中略)それらを難破船のように打ち砕いて海に沈めます。そして、海から新たに――金、銀、鉄、銅、それにダイアモンド、ルビー、トルコ石などのきらめく陸地が、大昔に海中に洗い落とされて百万世紀にもわたって堆積した泥の中を、のたうちまわりながら隆起してきます。--「調停者の鉤爪」第24章

ウールスの名残の漂流物が山積みになった岸辺をセヴェリアンは北に向けてとぼとぼと歩いていった。夜になり緑のリュンヌのもとでセヴェリアンは、ヴァレリアが水底に沈んだウールスのためにすすり泣くのを見た。ヴァレリアの涙がセヴェリアンの頬を濡らしたが、気がつくとリュンヌは雲に覆われ、暖かい雨が降っていた。再びリュンヌが姿を表すと、かつて独裁者の飛翔機からセヴェリアンを連れ去った怪物――その翼がノトゥールだと気がついた――がセヴェリアンのそばに岸辺に舞い降りた。いつのまにかセヴェリアンがその背に乗り、かつての城塞の場所まで運ばれた。城塞の高い塔は水面の上に出ており、その間にジュトゥルナが座っていた。ジュトゥルナはセヴェリアンに、過去に向かう方向、未来に向かう方向を指し示した。

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アプ・プンチャウ

ジュトゥルナに示された過去の方向に向かってセヴェリアンは迷わず進んだ。いつのまにか周りの水は空気に変わり、洪水はパンパの緑の草原に変わっていた。そこでは<古い太陽>はいまだ衰えていなかった。やがてセヴェリアンは耳慣れない言葉を話す原住民の貧しい村に行き着いた。疲れきったセヴェリアンに背の高い女が食べ物と水を与えた。セヴェリアンは女の小屋に着いていき、そこに居座ることにした。

セヴェリアンは食べ物のお礼に女の小屋を修理してやった。女が昼間は村のまじない師のもとで働いていたので、セヴェリアンもまじない師のため雑用をこなし、ゆっくりと村の一員となっていった。セヴェリアンは女の粗末な家を立て直すことにした。以前ペルリーヌのショールを残してきた羊飼いの小屋のことを思い出しながらアーチ構造の屋根をかける間、村人たちは物珍しそうにセヴェリアンの作業を見守っていた。

小屋が完成し、集まった村人たちにセヴェリアンは身振り手振りで自分がどこから来たのかを説明してきかせた。しだいに村人たちは動揺し、まじない師と首長の命令で男たちは武器を持ってきてセヴェリアンを取り囲んだ。セヴェリアンが<太陽>をもたらし、空からやってきたと話したのが原因だった。セヴェリアンは村人たちの目の前で朝を待たねばならない、そしてセヴェリアンが連れてこなくとも太陽が昇ったなら、嘘をついたセヴェリアンと女は死なねばならないのだった。絶望にかられたせヴェリアンは、今度は言葉を用いず、身振りだけで自分の生涯の物語を語り始めた。やがて朝日が昇るべき時間となったがあたりは暗いままで、村人たちは異変に気がついた。まじない師と首長はセヴェリアンの足もとにひれ伏すと、次の瞬間既に空高く昇った太陽が姿をあらわした。(注:本文中にはセヴェリアンの奇跡の理由は示されていないが、本書の補遺ではウールスと太陽の間を巨大な物体――おそらく宇宙船――が通過したためと示唆されている)

セヴェリアンと女はまじない師の家の一番良い部屋を与えられた。セヴェリアンはもはや働くことは許されず、その代わり怪我人や病人が連れてこられるようになった。セヴェリアンは時にデクランを癒したように、また時には単に組合で学んだ方法で治療をおこなった。村は二度放浪民の集団に襲われた。最初の戦いで首長が倒れたため、セヴェリアンは村人たちを率いて敵を追い払った。二度目の襲撃で散々打ちのめされた敵は、二度と村を襲うことはなかった。セヴェリアンに建築法を教わり村人たちは大きな建物を建造した。それはジョレンタがその上で死んだ建物だった。長い年月が過ぎ、セヴェリアンはもとの時代に帰るため、ジュトゥルナを求めて海へ向かった。若い首長と男たちが追いついてセヴェリアンを連れ帰ろうとするが、セヴェリアンは村に戻るのを拒んだ。

腐敗臭のする暗闇の中で目覚めると、側にはオッシパゴとバルバトゥス、ファミリムスの三人がいた。明かりがともり、セヴェリアンは怖れていたもの、原住民たちが<日の頭>=<アプ・プンチャウ>と呼んだ自らの遺体を眼にし、自分もまたエイドロンなのだと理解した。イエソドに向かう船の中で眼にした自分そっくりの死体はまさにセヴェリアン自身で、その後ツァドキエルによってエイドロンとして復活させられたのだった。セヴェリアンは神殿奴隷たちに、船で三人に出会った後の物語を全て話し、神殿奴隷たちもまたセヴェリアンに物語の解釈を語った。イエソドに向かう船はしばしば時間の流れに逆行して進む。おそらく<新しい太陽>はセヴェリアンの生まれた時代よりもはるか昔に造られたのかもしれない。<新しい太陽>の力でセヴェリアンは時を遡り、その力が尽きた時点、すなわち<新しい太陽>が造られた時間で止まった、そこがアプ・プンチャウの時代だったのかもしれない。それならば、<新しい太陽>の光がウールスに届けばセヴェリアンの力も復活するだろう。

三人が去り、セヴェリアンは自分自身の遺体とともに残された。神殿奴隷たちは、遺体に近づきすぎるとセヴェリアン――エイドロンとして復活した新しいセヴェリアン――は消滅してしまうと警告していた。恐怖に耐えかねたセヴェリアンは建物の壁を壊して外に出た。目の前には<時の歩廊>が幾本も伸びていた。翼を持った小さなツァドキエルと、緑色の男がそれぞれ一本の道の側に控えていたが、セヴェリアンは誰もいない道を選んだ。振り返ると、死から甦ったアプ・プンチャウが供え物を食べているところだった。

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ウシャス

セヴェリアンはウシャスの浜辺に戻った。焼いた魚をのせた木皿を持った男が前を歩いており、海辺の祠の前で木皿を奉げてひざまずいた。セヴェリアンの問いに男は、魚はいつも眠っており、いつも腹を空かしている神<眠るもの>のための奉げものだと答えた。男は、最初であり最も偉大な神、かつて空腹のあまり全ての大地をむさぼり喰った<眠るもの>の司祭だった。オディロ、ペガ、タイスの三人もまた神々として信仰の対象となっていた。<眠るもの>が大地をむさぼり食ったのは、男の祖父母たちが神々の中の神によってウシャスに連れてこられた直前のことだった。セヴェリアンは、ヴァレリアに近衛兵が報告したこと――神殿奴隷の船から一組の男女が降り立ったこと――を思い出し、イエソドでエイドロンと戦って敗れた船乗りたちがその男女なのだろうと思った。オディロの住む場所に連れて行ってくれとのセヴェリアンの頼みに司祭が案内した先には、三つの祠が立っていた。「ここに他の神々がお眠りです」と司祭は言った。

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