Last Updated:
05/07/2002
共和国の北方のジャングルに住む肉食動物。登場「人物」とは言えないかもしれませんが、人語を話すので入れておきます。
「その動物はずっと昔に星から連れてこられたのよ。ウールスの利益のために持ってこられた他のたくさんのものと同様にね。それは犬くらいの知能しかない、いや、もっと低いかもしれないわ。でも、腐肉を好んで食べ、墓場をうろついていて、人間の肉を食べると、少なくとも一時は、人間の言葉や事柄がわかるのよ。蘇生薬のアルザボはその動物の頭蓋骨の基部にある腺から作られるの。話していること、わかる?」--「調停者の鉤爪」第10章
アルザボが自分の食べた死者の言葉を話すのと同様に、アルザボの腺から作られた蘇生薬を服用して死者の肉を食べることにより、一定期間死者の記憶を共有することができます。ヴォダルスの一味は、グループの結束を高め、また死者の貴重な知識を共有するために、ひんぱんにアルザボの蘇生薬を使用しています。セヴェリアンが最初に墓地でヴォダルスに出会ったのも、彼らがアルザボの蘇生薬とともに食するための死体を盗掘している時のことでした。
「この薬の使用法を教えたのは、われわれの同盟者だった。彼らは人間がふたたび浄化されて、宇宙を征服して彼らと結合する用意ができるのを待っている。この動物を持ちこんだのは、秘密の邪悪な計画を持った別の者たちだった。」--「調停者の鉤爪」第11章
ヒルデグリンの警告によりセヴェリアンがなにか重要な事柄にかかわっているらしいと知ったヴォダルスは、愛するセクラの肉をアルザボとともに食させることにより、セヴェリアンを自らの陣営に引きこもうとします。ところが<鉤爪>の力によりアルザボは通常よりはるかに強力な効力を発揮し、セクラはセヴェリアンの中で第二の生命を得ることになります。
その後、スラックスの町から逃亡したセヴェリアンは、山の中の一軒家に住むキャスドーのもとで、キャスドーの夫のビーキャンと娘のセヴェラを食べたアルザボと闘うことになります。
獣はよつん這いで待っていた。にもかかわらず、肩の高さがわたしの頭の高さと同じくらいあった。頭を低く下げていて、耳の先が、背中のてっぺんに立っている毛よりも下になっていた。炉の光を受けて、歯が白く光り、目は赤く燃えていた。世界の縁を越えてやってきたといわれる動物の目なら、これまでいろいろと見ている――ある種族学者の主張によれば、ちょうど、戦争か疫病で住民の死に絶えた田舎に、いろいろの種類の猫背の蛮族が、石斧と火を持って入りこんでくるように、ここに起源を持つ動物の死によって、それらの動物が引き寄せられたのだという――しかし、それらはただの獣の目だった。ところが、アルザボの赤い目はそれ以上のものだった。人類の知性もないし、獣の無邪気さもない。どこかの暗い星の地底の穴から、鬼がついに這い上がってきたら、そんな目つきをしているだろう、と思われるような目つきだった。--「警士の剣」第16章
アルザボ自体には知性がるかどうかは不明ですが、アルザボに喰われた犠牲者は、少なくともしばらくのあいだは人間としての意識を保っており、また自分が今は獣の中で生きていることも認識しています。セヴェリアンとの闘いから一度は引き下がったアルザボは、キャスドーたちを襲った獣化人に闘いを挑みますが、これが家族を守ろうとするビーキャンの意識によるものなのか、それとも単に自分の獲物を奪われまいとする獣の本能によるものなのかははっきりしません。
ところで先に引用したヴォダルスの台詞にある「秘密の邪悪な計画を持った別の者たち」とはおそらくイナイア老たち神殿奴隷を指すものと思われます。彼らはアルザボをウールスに持ち込み、アルザボの薬の力によって<新しい太陽>をもたらすことのできる独裁者を生み出そうとしたのです。
なお<調停者>の話をしてくれないかというセヴェリアンに、ドルカスが答えて言う場面があります。
「彼は人間の言葉を話す獣として人間の前に現われることもあるのよ」--「調停者の鉤爪」第26章
この伝説はアルザボの力によってセヴェリアンが独裁者となり、ついに<新しい太陽>をもたらすことを指しているのだと思われます。
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