ultan.net: 登場人物

Last Updated:

07/21/2001




アプ・プンチャウ Apu-Punchau

<絶対の家>からスラックスに向かう途中の<石の町>にかつて住んでいた、伝説時代の指導者。ヴォダルスの命を受けたヒルデグリンは、クーマイの巫女と魔女メルリンの助力により、アプ・プンチャウを蘇らせ、その偉大な知識を手にしようとします。

老女が答えずにいると、メルリンがいった。「伝説にさえなっていないのよ。今は学者でさえ彼の生涯を覚えていないわ。お母さんの話では、その名前の意味は"日の頭"なんだって。大昔に、彼はここの人々の中に現われて、たくさんの素晴らしい秘密を教えたのよ。彼はしばしば姿を隠したけれど、いつも帰ってきたの。でも、ついに帰らなくなって、侵略者が町を荒廃させてしまったんだって。今度、帰ってくれば、それが最後になるでしょう」--「調停者の鉤爪」第31章

ヒルデグリン、クーマイの巫女、メルリン、それにセヴェリアンとドルカス、ジョレンタの6人は、「魚の口」と呼ばれる赤い星をめぐる世界に住む古い精神、アプ・プンチャウの時代から行き続けている精神の力により時を遡り、アプ・プンチャウの生きた時代を目にします。

一人の男が進み出て、踊り手たちを迎えた。その顔を見て、わたしはびっくり仰天した。たとえ彼が百本の腕を持っていたとしても、いや、自分で自分の首をぶらさげていたとしても、それほど驚きはしなかったろう。実は、その男の顔は、わたしが幼年時代から知っていた顔、つまり、幼年時代に遊んでいたあの霊廟の、死者のブロンズ象の顔であった。(中略) そこにいる数百人の群集のうちただ一人、彼だけが実際にわれわれを見たことが、わたしにわかった。--「調停者の鉤爪」第31章

ヒルデグリンとヴォダルスにとっては、アプ・プンチャウの復活は、単にアルザボによる死者の復活と同列のものにすぎません。ヒルデグリンは交霊術師(necromancer)の力により死者を復活させようとするわけですが、後にセヴェリアンは、生者漁り(vivimancer)たるアプ・プンチャウによって自分たちが引き寄せられたのではないか、と考えます。実際には、アプ・プンチャウはセヴェリアンの多くの姿のうちの一つのインスタンスであり、一方が他方を呼び出した、というよりは、互いが共鳴しあい引き寄せあった、という方がより正確かもしれません。

"Urth" では、アプ・プンチャウは人々の間に空からやってきて奇跡を起こし、さまざまな知識を伝え、侵略者との戦いに勝利する宗教的、軍事的、文化的指導者として描かれます。ある時アプ・プンチャウはもといた世界に帰ろうとして、怒った民衆によって虐殺されますが、その後も何度も復活します。

なおアプ・プンチャウは、別名インティ(Inti)とも呼ばれる、西暦1200年ごろから現在のペルー南部のクスコ周辺で栄えたインカ文明の太陽神の名前ですが、こちらの本家アプ・プンチャウが「新しい太陽の書」のアプ・プンチャウと同一というわけではないと思います。そもそも「新しい太陽の書」の登場人物のほとんどはなんらかの伝説、神話、宗教上の人物に基づいているわけで、アプ・プンチャウだけを特別扱いするのも変でしょう。とは言っても、"Urth" でもアプ・プンチャウの時代が舞台の一つになりますし、キリスト教の聖人とかと違って、欧米読者にとっても(もちろん日本人にとっても)なじみのない存在なので、本家について引用しておきます。

ケチュア語で太陽の意味。インカ族 (インカ文明) の宗教では、万物は創造神ビラコチャによってつくられ、太陽もまたこの神が創造したと説明される。その太陽は、インカ族の祖先でもあり、インカ族の首長すなわちインカ帝国の皇帝は太陽の子であった。インカ帝国は、中央アンデスの諸民族を征服したのちに、国家統合の方法として、インカ族の宗教の普及を図り、各地に太陽の神殿を建設し、神殿の土地と家畜の管理を人民の義務とした。また、アクリャワシという処女の館を神殿に付属して設け、選ばれた処女たちに儀式用の織物を作らせたりした。インカ帝国の儀式では、創造神、太陽、雷光はつねに最高の権威をもっていた。そして毎年6月に、インティ・ライミという太陽に対する盛大な儀式が挙行された。太陽の輝きは黄金の輝きと同一視され、クスコの太陽の神殿は、コリカンチャすなわち黄金の囲いともよばれ、内部はさまざまな黄金で飾ってあった。--平凡社「世界大百科事典」大貫 良夫著<インティ>の項より

M: メニュー I: インデックス P: アブディースス N: アムシャスパンド

管理人連絡先 webmaster@ultan.net