Last Updated:
07/14/2002
「調停者の鉤爪」第24章のタロス博士の劇「天地終末と創造」に登場する伯爵夫人のこと。作中ではジョレンタによって演じられます。最初伯爵夫人カリナは独裁者の宮廷を舞台にした喜劇の登場人物のような役回りを演じます。
伯爵夫人 あーら、わがきみ!こんなところで何をしていらっしゃいますの?
メシア 祈っているのですよ、あなた。少なくとも、靴をお脱ぎなさい。ここは神聖な土地です。
伯爵夫人 殿様、この馬鹿者はだれですの?
独裁者 狂人だ。同様に狂っている二人の女とさまよっていた。 --「調停者の鉤爪」第24章
しかし劇が進行するにつれて、その役柄はしだいにシリアスなものに変わっていきます。
伯爵夫人 もし、<新しい太陽>が昇るとともに、わたしが消え失せなければならないとしたら、今それを知っても手遅れですわ。もう、真夜中すぎたかしら?
侍女 ほとんどすぎています、奥様。
伯爵夫人 (観客を指さして)これらの善男善女のすべては――どうなりますの?
メシア 秋がきて散った枯葉は、どうなる?
(中略)
伯爵夫人 もし、わたしの体にあなたの一部が残っていたら――精液の雫がわたしの股間に詰まっていたら・・・・・
メシア もしそうなら、もうしばらくウールスをさまようかもしれない。帰り道を決して見つけることのできない迷子としてだ。しかし、おまえと寝るつもりはないぞ。おまえは自分が死人以上の存在だと思っているのか?それ以下なのだぞ。
侍女、気絶する。
伯爵夫人 あなたはすべての人間の父だとおっしゃいましたわね。確かに、そうですわ。あなたは女にとって死なのですから。--「調停者の鉤爪」第24章
メシアとは<新しい太陽>の到来によってウールスに死と再生をもたらすセヴェリアン自身の象徴です。従って伯爵夫人は、女にとって、さらには滅び去るウールスのすべての人々にとって「死」であり「父」であるセヴェリアンによって滅ぼされるウールスの世界と人々を代表しています。またシリーズ第5作の "The Urth of the New Sun" の描写からは、ヴァレリアと伯爵夫人との強い結びつきが示唆されます。さらに以下の部分は "The Urth of the New Sun" の中にほぼそのままの描写があります。
伯爵夫人 まだ一刻もたっていませんが、庭園で嘆いているわたしを兵士たちが見つけたのです。そのとき、侍女はわたしを慰めようとしていたのです。わたしが暗い戸外にいるのを恐がると、兵士たちは<空気の道>と呼ばれるあの画廊を通って、わたしをアパートメントに連れ帰ってくれました。あの道は知っていますね?
審問官 よく知っています。
伯爵夫人 では、あそこにはいたるところに窓があいていて、隣接するすべての部屋と回廊に通じていることも、ご存じでしょう。あそこを通っていった時に、窓の一つに一人の男の姿が見えました。背が高く、手足が綺麗で、肩幅が広く、腰の細い人でした。--「調停者の鉤爪」第24章
<時の回廊>を移動したセヴェリアンが偶然見かける美しい女こそが伯爵夫人カリナなのです。このことから伯爵夫人が、<時の回廊>の歩行者たるセヴェリアンと、なんらかの強い結びつきを有することが推測できます。それがいったいどのような関係のものなのかは想像するしかありませんが、管理人は「カリナ=セヴェリアンの母親キャサリン」という説が気に入っています。
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