ultan.net: 登場人物

Last Updated:

08/18/2002




クーマイの巫女 Cumaean

ネッソスの植物園の<果てしない眠りの園>にある<クーマイの巫女の洞穴>に住む巫女。

「<クーマイの巫女>というのは、未来も過去も、何もかもわかる女のことだ。おれは信じないが、この場所全体がその女のためにだけ作られたという人もいる」

ドルカスがそっと尋ねた。「そんなことがあるかしら?」ヒルデグリンはその意味を取り違えた。いや、少なくともその振りをした。

独裁者が彼女をここに置きたがっている、と世間ではいうんだ。世界の裏側まで旅をしなくても、彼女と話ができるからな」--「拷問者の影」第23章

もともと「クーマイの巫女」とは、古代ギリシア・ローマ世界に十人いたとされる巫女(Sibylla)のうち、イタリア半島におけるギリシア最古の植民都市の一つクーマに住んでいた、もっとも有力な巫女のことです。従って「世界の裏側」というのはおそらくクーマのことであり、<果てしない眠りの園>が死火山の火口のように見えるのも、クーマ近郊のヴェスヴィオ火山を模したものでしょう。

その後クーマイの巫女は、魔女のメルリン、ヴォダルスの部下のヒルデグリンとともに<石の町>を訪れたセヴェリアンたち一行の前に現われます。ヴォダルスの命を受けたヒルデグリンが、クーマイの巫女の力により、かつて<石の町>に住んでいたアプ・プンチャウを蘇らせ、その知識をヴォダルスの野望の実現に役立てようというのです。(ところで<新しい太陽>の到来に反対するエレボスと同盟を結ぶヴォダルスが、<新しい太陽>の顕現であるアプ・プンチャウを招来しようとするのは、妙な気もしますが、ヴォダルスは独裁者を倒して自分のやり方で<新しい太陽>をウールスにもたらそう、あるいは<新しい太陽>によりもたらされるであろう知識のみを求めた、ということなのかもしれません)

「もし未来がいま存在していなければ、どうしてわれわれがその方向に移っていくことができる?もし過去がまだ存在していなかったら、どうしてわれわれはそれを後に残すことができる?精神は眠っている時に、その時間に取り巻かれている。だからこそ、眠りの中で人は死者の声をしばしば聞き、そして、未来の物事の情報を受け取るのよ。お母さんのような人々は、目覚めたままでその状態に入るすべを知っているから、自分自身の全生涯に取り巻かれて生きていることになる。(中略)

彼女にそれができるのではないのよ。彼女はとても老齢だけれど、この町は彼女が生まれるずっとずっと前に荒廃してしまったから。彼女自身の時が、彼女を共鳴させるのよ。なぜなら、それだけが、直接の知識によって彼女の精神が理解することのできるものなんだから。この町を回復するには、これが完全であった頃に存在していた精神を利用しなければならないのよ」--「調停者の鉤爪」第31章

読み飛ばしてしまいそうですが、この部分はけっこう重要な意味を持つように思います。セヴェリアンが絶対記憶を持つ存在であること、また歴代の独裁者がアルザボの薬の力によって記憶を受け継いできたこと、それは「時を共鳴」させて「ウールスを回復」させるために必要なことなのです。

想像していたとおり、クーマイの巫女はまったく人間の女ではなかった。といって、<絶対の家>の庭園で見たあの恐ろしい生物でもなかった。何かぬめぬめした爬虫類のようなものが、発行する棒のまわりにとぐろを巻いていた。頭を探したが、そのようなものはなく、その爬虫類の背中の模様の一つ一つが顔になっていて、それぞれの顔の目が、恍惚の表情を浮かべて閉じていた。--「調停者の鉤爪」第31章

クーマイの巫女はおそらくはイナイア老と同様に、ウールスの人類の間に留まっている神殿奴隷の一人なのだと思われます。一説では同じく神殿奴隷のオッシパゴ、バルバトゥス、ファミリムスの三人が名前だけ口にするカモウナとは、クーマイの巫女の別名ではないかと言われています。それが正しければ、クーマイの巫女の爬虫類の模様とは、神殿奴隷の探し求める世界の「蛇のしるし」をあらわすものかもしれません。

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