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09/22/2002
<共和国>の支配層で世襲制の貴族的階級。独裁者および独裁者を支持する官僚階級とは常に緊張関係にあります。高貴人の女性は<女城主(シャトレーヌ)>と呼ばれ、セクラの方、セアの方、ヴァレリア、バルビアの方、グラシアの方、ドムニナ、ペルリーヌ尼僧団のドムニセラエ、マンネアらが該当します。男性の高貴人は意外と名前が出てきませんが、ヴォダルス、ウルタン師らの他、エミリアンも高貴人ではないかと思われます。スラックスの執政官アブディーススが高貴人に属するのか、それとも大郷士(アーミジャー)階級に属するのかは不明ですが、法によるその支配の性質からして、後者ではないかと思われます。
「独裁者は人民を高貴人から守り、そして高貴人は・・・・・・人民を独裁者から守る」--「独裁者の城塞」第29章
<共和国>の各地方は高貴人の所領となっています。彼らは中央の独裁者の権威と、ある時は協調し、またある時は対立していたようです。これは例えばヨーロッパ近世における、封建領主から発展した貴族階級と、新興階級の勢力を背景とする王権との対立構造とも類似しているようですが、高貴人の起源は封建領主とはやや異なるようです。
「あれは本当に古い家系にちがいない」わたしはジョナスにささやいた。「彼女を見てごらん!まるで木の精だ。柳の木が歩いているみたいだ」
「ああいう古い家系は、最も新しいものなんだよ」彼は答えた。「古代には、彼らのようなのは全然いなかったんだから」--「調停者の鉤爪」第10章
これには二通りの解釈が可能です。まず一つには高貴人たちは比較的最近に宇宙からウールスにやって来て支配階級となった人々であると考えられます。もう一つの可能性は、遺伝子操作等の手段で人工的に造りだされた種族だということです。 "exultant" という英語は「歓喜した、勝ち誇った」を意味するので、いずれにしても戦争なり権力闘争なりに勝利して支配階級となったようなニュアンスがあります(なので訳としては「歓喜人」とかでも良いかもしれません)。
彼は振り向き、椅子の後ろの乱雑な棚を探して、小型の本を取り出した。「高貴人の家系がいくつあるか、見当がつくか?このリストにはまだ存続している家系だけを収録してある。断絶した家の総目録を作れば、大百科事典ぐらいになるだろう。そのいくつかはわたし自身が断絶させたものだ」
彼は笑い、わたしも一緒に笑った。
「それぞれの家に約半ページずつ与えてある。全部で、七百四十六ページある」--「拷問者の影」第7章
このように、高貴人には1,492の家系が存在することになります。このようにきわめて限定的な閉じた集団であることも、高貴人が特殊な素性であることの傍証となります。
彼女はうなずいて礼をいった。それから立ち上がり、扉のところにきた。彼女は予想以上に背が高く、独房の中でまっすぐに立つことができないほどだった。--「拷問者の影」第7章
高貴人たちの身体的な特徴として、ずば抜けて背が高いということがあります。それでは宇宙からやって来たのであれ、遺伝子操作の産物であれ、単に背が高いという以上に彼らには自分たちを高貴人たらしめている何らかの特徴があるのでしょうか。高貴人たちは自分たちの娘を人質として独裁者の後宮に差し出す代わりに、クローンであるカーイビットを用います。
「彼女たちはもちろん、高貴人の婦人の体細胞から培養された "影"(カーイビット)であって、血液の交換によって高貴人の若さを延長するためのものなのだ」--「拷問者の影」第7章
グルロウズ師はセヴェリアンにこう言いますが、「新しい太陽の書」に登場する高貴人たちには、単に回春術のためにクローンを犠牲にするような非道徳性はあまり感じられません。そうではなく、ここには高貴人を高貴人たらしめるための何らかの目的があるように思えます。「新しい太陽の書」には、人肉嗜食をおこなって相手の生命・知識を吸収するというモチーフ(アルザボ、セクラの方など)と、肉体を巨大化することによって高次の知性を獲得するというモチーフ(バルダンダーズ、アバイアなど)が存在します。高貴人とカーイビットの関係も、このような観点からとらえられるのかもしれません。
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