Last Updated:
05/04/2002
歴代の独裁者の御世に仕えてきた退化人=神殿奴隷(ヒエロドゥール)の高官。独裁者の宮廷の最重要人物。
わたしが初めて宮廷に出仕した時に、重大な秘密だとして、共和国の政策を実際に決定するのはイナイア老だと教えられたものよ。ところが、二年ほどして、非常に高い地位の人――名前を挙げることもできるのよ――が、こういったわ。支配しているのは独裁者だけれど、<絶対の家>の人々の目には、支配しているのはイナイア老であるように見えるかもしれない、と。そして、去年、ある婦人が――その人の判断を私は他のどんな人の判断よりも信用しているのだけれど――次のように打ち明けたわ。どちらにしても実際上、相違はないと。--「拷問者の影」第10章
イナイア老は最初の独裁者であるイマールの時代から独裁者を補佐してきており、異なる時空とつながっていると思われるネッソスの植物園、独裁者の宮殿である<絶対の家>(たぶん)と、そのすぐ裏側に存在する秘密の<第二の家>などを造ります。
「これら全部と・・・」彼は言いよどんだ。「そして同様のものが他に何百もあって、いわゆる<第二の家>を形成している。これらは、初代の独裁者によって、<絶対の家>の壁の内部に秘密の宮殿を造り出すように要請されたイナイア老の仕事なのだ。きみやわたしだったら、きっとただの秘密の続き部屋しか作らなかったろうがね。彼はその秘密の家が、必ず公の家と共存するように工夫したのだよ」--「調停者の鉤爪」第20章
イナイア老はまた異なる時空を覗き見る<鏡>を所有しています。ヘトールがアギアのために怪物を呼び寄せるのに使った鏡も同様の仕掛けだと思われます。
「今ここできみが見ているのは、太陽と太陽の間を旅行するのに使われる手段の模型なのだ。だが、これらを使って<魚>を呼び出すことができる。そして、たぶんその他のものもね。そして、子供たちの飛翔機が時にはパビリオンの屋根を火事にするのと同様に、われわれの鏡もまた、集中力は強くはないが、危険がなくもないのだよ」--「拷問者の影」第20章
イナイア老は独裁者の命を受けてヴォダルスの反乱を陰で操作しており、アギアがヴォダルスにより殺された後は、代わりにアギアを反乱軍の指揮官に据えます。これらの行為、および歴代の独裁者のための助力は、全てある目的を達成するためのものです。
そのうちに、わたくしの従兄弟たちが、人類だけでなく、われわれにも味方をする用意のできるときがくるかもしれません――しかし当面は、ウールスをほかの多くの殖民された世界よりもいくぶん意義の少ないものと見、またわれわれ自身をアスキア人と(その点では黄色人種やその他多くの人種と)同等に見る態度を、維持します。--「独裁者の城塞」第35章
その目的とは、従兄弟たち、すなわち神殿奴隷たち、およびより高次の存在(神聖書記)にウールスの可能性を認めさせること、そのために歴代の独裁者たちを導き、ついに<新しい太陽>をウールスにもたらすことのできる独裁者を生み出すこと、でしょう。新しい独裁者が歴代の独裁者の記憶を継承するのに用いる薬品もまた、イナイア老の手によるものなのだと考えられます。ちょっとベネ・ゲセリットみたいですね。この薬品はアルザボから造られたもので、おそらくアルザボはこの目的のためにウールスに連れてこられたものかもしれません。
「この薬の使用法を教えたのは、われわれの同盟者だった。彼らは人間がふたたび浄化されて、宇宙を征服して彼らと結合する用意ができるのを待っている。この動物を持ちこんだのは、秘密の邪悪な計画を持った別の者たちだった」--「調停者の鉤爪」第11章
これはヴォダルスの台詞なので、「同盟者」はエレボス、「邪悪な計画を持った別の者たち」がイナイア老ら神殿奴隷を指します。なおイナイア老の手紙にある「黄色人種」という言葉は原文では "the Xanthoderms" とあります。"xantho-" に「黄色の」の意味があるので確かに間違いではないでしょうが、単語の最初が大文字なので、固有名詞、おそらくは共和国の西にある "Xanthic Lands" に住む人々を指すと思われます。
ところでセヴェリアンと独裁者がヴォダルスに捕らわれている時、イナイア老は自ら反乱軍の中に身を投じて独裁者を救出しようとしましたが、それはおそらく以下の部分を指すと思われます。
われわれの隊列はガイドとして三人の野蛮人を連れていた。兄弟かまたは双子と思われる二人の若い男と、そしてもっと年取ったのが一人。その男は年齢のためだけではなく、奇形のために腰が曲がっているようで、奇怪な仮面をずっとつけていた。(中略)
隊列のわたしの位置よりもかなり先のほうに、覆いを掛けた駕籠があり、それに独裁者が乗っていた。彼は、医者の話ではまだ生きていると考えてよいようだった。そして、ある夜、わたしの護衛が仲間どうしでお喋りをしており、わたしがうずくまって焚火にあたっていた時に、老ガイド(腰が曲がっているし、仮面のせいで妙に頭が大きく見えるので、見まちがえようがない)がその駕籠に近づいていき、その下に忍びこむのが見えた。それからしばらくして、こそこそと立ち去った。この老人は "ウトゥルンク" つまり、虎に化ける能力のある巫子だといわれていた。--「調停者の鉤爪」第11章
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