ultan.net: 登場人物

Last Updated:

10/08/2005




カーイビット khaibit

高貴人の女性(女城主)の身代わりとしてつくられた存在。高貴人たちは独裁者への忠誠を示すために一族の娘を独裁者の後宮に差し出すことを要求されますが、実際に独裁者と褥をともにするのはカーイビットの役目です。

「それはだ、彼らは対面上、いわゆるカーイビット、つまり陰の女を使っている。女城主たちとそっくりの平民の娘だ。そういった娘をどこで手に入れるのか知らないが、彼女らは本物の女城主の代理をつとめることになっている。もちろん、彼女らはそれほど背は高くないがな」--「拷問者の影」第7章

セヴェリアンがロッシュとともに訪れる売春宿<紺碧の家>の女たちは、<紺碧の家>の主人である<両性具有人>の用意した、セクラの方、セアの方、バルビアの方、グラシアの方といった女城主たちのカーイビットであると考えられます。またカーイビットは独裁者の後宮での身代わりという役割以外に、高貴人が高貴人であるために重要な役割を果たします。

「彼女たちはもちろん、高貴人の婦人の体細胞から培養された "影"(カーイビット)であって、血液の交換によって高貴人の若さを延長するためのものなのだ。わたしが取りまとめる邂逅を、純情なローマンスとわびしい売春との中間のものではなく、珍しい体験だと客人に感じさせる、それが、わたしの腕なのだ。君は珍しい体験をしたと感じただろう?」--「独裁者の城塞」第24章

体力を取り戻すために血液を交換するというモチーフは、セヴェリアンがヴォダルスに捕えられ、治療を受けるエピソードにもあらわれます。またバルダンダーズが城の中で養育していた、成長を促進された稚児についても、同様の目的があったのかもしれません。

するとその時、上からこちらに向かって階段を降りてくる若い女に気がついた。

われわれの目が合った。

その瞬間に、以前にこうしてわれわれが視線を交えたことがあると、彼女が意識していることが、はっきりとわかった。記憶の中で、彼女がまたいうのが聞こえた。「まあ、お姉さま」とあの可憐な声で。そして、あのハート形の顔がぱっと心に浮かんだ。それはヴォダルスの后のセアではなく、<紺碧の家>で――ちょうど今のようにわたしが階段を上がっていった時に降りてきて――すれちがった、セアに似た(そして疑いなく彼女の名前を借用している)あの女だった。とすると、売春婦が芸人とともに呼ばれていることになる。何か知らないがこれから始まる宴会のために。--「調停者の鉤爪」第19章

セヴェリアンが<絶対の家>で再会したセアの方のカーイビットは、どのような目的のために<絶対の家>を訪れていたのでしょうか。コピー元であるセアの方はこの時<絶対の家>から逃げ出してヴォダルスのもとにいたわけですから、「血液の交換」以外にもカーイビットたちは独裁者およびイナイア老によって様々な用いられ方をしていたのかもしれません。

セクラの方のコピーであるカーイビットは、セヴェリアンに対して、彼の心の中に存在する「セクラの方」とは一体なにを意味するのかという問いを投げかけます。

「きみはセクラの方ではない」わたしはいった。

「でも、わからない? どちらも彼女ではないのよ。あなたが前に会った人だって、セクラの方だったかどうか――いや、わたしが間違っているわね。あなたは<絶対の家>にいったことがあるの?」(中略)

彼女は肩をすくめた。「わたしがいうのはね、セクラの方はセクラの方ではない、つまり、あなたの心の中のセクラの方ではないということよ。あなたが問題にするセクラの方はそれしかないのにね。わたしも、それではないわ。だとしたら、わたしたちの間にどんなちがいがあるのかしら?」--「拷問者の影」第9章

セヴェリアンは後に文字通りアルザボの力によってセクラの方を「心の中」に住まわせることになるわけですが、その「セクラの方」は、果たして本物のセクラの方なのかどうかという疑問があります。また同時にそれは、セヴェリアンにとっての「現実認識」が、果たして他人(あるいは読者)にとっても本当に正しいものなのか、という問題にも結びつきます。

「弱い人々は自分たちに何が押しつけられているかを知っている。強い人々は自分たちが信じたいと願っていることを――それを無理やりに現実のものにすることによって――信じるのよ。独裁者とは、自分が独裁者だと信じて、その力によって、他人にそれを信じさせる人間でないとしたら、いったい何なの?」--「拷問者の影」第9章

さすが実は独裁者である<両性具有人>により手配された<紺碧の家>のカーイビットだけあって、えらく理屈っぽい売春婦ですが、ここで彼女は独裁者となるセヴェリアンの未来を予言しているわけです。

わたしは服を脱ぎながらいった。「にもかかわらず、われわれはみんな何が本物か発見しようと懸命になっている。なぜなんだ?たぶん、われわれは神の知識に引かれているのだろう。秘儀解説者が言うのはそのことなんだ。それだけが真実だとね」

彼女は自分の勝ちだと知って、わたしの太股にキスした。「あなた、本当にそれを見出す用意ができている?いいこと、あなたは恩寵に包まれていなければならないのよ。さもないと、拷問者に渡されてしまうわ。それはいやでしょう」

「ああ」わたしはいった。そして、彼女の頭を両手で抱えた。--「拷問者の影」第9章

セヴェリアンは、かなり怪しい判断力を伴った「絶対記憶」と、超越者に絶対服従しようとする拷問者のメンタリティによって、自らが「真実」「神の知識」と信じたものを無理やりに現実にしようとし、それによって<新しい太陽>をウールスにもたらすとともに破壊するわけです。

ところで、神学論議をしながら女にこういうことさせるってのは、いかにもセヴェリアンらしいですね。これが初体験のはずなのに。それにしても気持ちよさそう:-)

M: メニュー I: インデックス P: 女城主 N: 蛙

管理人連絡先 webmaster@ultan.net