ultan.net: 登場人物

Last Updated:

01/05/2003




<十七人組>に忠誠を誓った者 Loyal to the Group of Seventeen

<共和国>の軍隊に捕えられたアスキア人の捕虜。オリサイアの避病院に入院したセヴェリアンと同じ病室に居合わせます。名前は名乗らず、ただ自分のことを「<十七人組>に忠誠を誓った者」とだけ呼びます。

右側には頭を短く刈った男が寝ていた。最初、それを見て、ペルリーヌ尼僧団の奴隷の一人かと思った。声をかけると、彼は首を回してこちらを見た。すると間違いだとわかった。

その眼は、これまでに見たどんな人間の目よりもうつろだった。わたしには見えない精霊でも見つめているような表情をしていた。「<十七人組>に栄光あれ」彼はいった。--「独裁者の城塞」第5章

この捕虜はどうやら通訳のような役割であったらしく、普通のアスキア人とは違って<共和国>の言葉を話すことができます。しかしながらその言葉は、他のアスキア人と同様に<正しい思想>と呼ばれる承認されたテキスト――何千種類もの決まり文句――のみで成立しています。

「彼らがわれわれの言葉を喋るとは知らなかった」

「喋らないさ。こいつと話をしに何人かの将校がやってきたが、そいつらの意見では、こいつは通訳だったらしいということだ。たぶん、われわれの兵士を捕虜にした時に、尋問したのだろう。それが悪事でも働いたかして、兵卒の位に引き下げられてしまったんだな」--「独裁者の城塞」第5章

セヴェリアンやアスキア人と同じ病室には、若い娘フォイラ、それに彼女に求婚しているハルヴァード、メリトといった兵士たちが入院しています。ハルヴァードとメリトはフォイラの求めによりそれぞれ物語をきかせますが、これをきいていたアスキア人もまた自分の物語を一同にきかせます。しかしそれはやはり<正しい思想>のテキストだけで構成された物語です。なおアスキア人の物語は実際にはフォイラによって普通の言葉に翻訳(?)されています。<新しい太陽の書>の中ではさまざまな物語内物語(枠物語)が配置され物語に重層的な効果を与えていますが、その中でもこのアスキア人の物語は<物語>、<語り>というもののあり方に対するウルフの考え方をかなり直接的にあらわしているのではないかと思います。

この物語は、この本に記録したものの中でもっとも短く、もっとも単純だが、わたしはこの物語からある程度重要ないくつかのことを学んだように思う。その第一は、われわれの会話の非常に多くの部分が決まりきった慣用句で成り立っているということである――われわれは、それを自分自身の口で新しく作り出したと思っているのだ。(中略)

第二に、表現から衝動を取り除くことが、いかに難しいかということを学んだ。アスキアの人々は彼らの支配者の声だけで話をするように、飼育されていた。だが、彼らはそれで新しい言語を作りだしていた。そして、アスキア人の話を聞いた後では、彼が表現したいどんな思想でも、その言語で表現できることを覚った。

第三に、物を語るということの多面的な性質を、わたしは改めて学んだ。たしかに、アスキア人のものほど平明なものはありえなかった。しかし、それはどういうことなのか? <十七人組>を賞讃するためのものだったのか? その名前の恐ろしさだけで、悪人たちは逃げてしまった。この物語は彼らを糾弾するためのものだったのか?--「独裁者の城塞」第11章

このセヴェリアンの独白は、<物語>の部分を<新しい太陽の書>と読み替えることによって、ウルフ自身の文学的な挑戦を示しているといって良いでしょう。

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