Last Updated:
05/25/2002
サルトゥスの村の北東の鉱山の奥に住む生き物。
説明はしにくいが、彼らは恐ろしい姿をしていた――毛深くて、胴体が屈まっていて、腕が長く、足が短く、首が太い点は、猿に似ていた。歯は剣歯虎の牙に似て湾曲し、鋸状の縁を持ち、その頑丈な顎から指ほどの長さに下向きに突き出ていた。しかし、わたしに恐怖を感じさせたものは、それらの特徴のどれかでも、その夜行性の毛皮でもなく、彼らの顔の何かだった。たぶん、青白い瞳孔のある巨大な目だったろう。その目は、彼らがわたしと同様に人間であることを物語っていた。老人が腐りかけた肉体に幽閉されているように、また、女性が弱い肉体に閉じこめられているために大勢の不潔な欲望の餌食になるように、この人々は不気味な猿の姿に包まれており、それを自覚しているのだった。彼らに取り囲まれたとき、わたしはそれを悟った。そして、彼らの体で目だけが光を放たない部分であるだけに、なおさら気持ちが悪かった。--「調停者の鉤爪」第6章
猿人たちは最初セヴェリアンに襲いかかるものの、セヴェリアンの<鉤爪>の光を目にすると、闘うのをやめて憧憬の表情で<鉤爪>を見つめます。後にセヴェリアンは連れのジョナスに、猿人たちはネッソスの<壁>の中に駐屯するものたちと同様に独裁者の兵士なのかと問いかけます。
「きみの見た猿人が同じ種類の交雑動物であるかどうか、わたしにはわからない。わたしが見たやつは、毛皮を除けば、人間そのものに見えた。だから、どちらかといえば、きみの意見に賛成したい。つまり、彼らは坑道で生活していたために、そして、あそこに埋没している都市の遺物と接触したために、基本的な性質が変化した人類なのだとね」--「調停者の鉤爪」第8章
猿人たちは結局、地底からの不気味な足音を耳にして、瞬く間に逃げていきます。
また足音が聞こえた。わたしは向きを変えて、剣で前を探りながら逃げ出した。大陸の根元からわれわれが呼び出してしまったその生き物が何であったか、今はわたしは知っているように思う。しかし、その時には知らなかった。そして、そいつを目覚めさせた原因が、猿人の唸え声だったか、それとも<鉤爪>の光だったか、それとも他の物だったか、わたしにはわからなかった。ただ、わかったのは、足の下のずっと深いところに何かがいて、そいつの前では、あれほど恐ろしい姿をしており、人数も多い猿人たちが、まるで風に吹かれた火の粉のように逃げまどうということだけだった。--「調停者の鉤爪」第6章
この大地の根元からの足音がいったい何者なのかはわかりません。あるいはアバイアやエレボスの仲間の生き物なのかもしれません。ここで珍説をひとつ。実はこの足音の正体はバルログなのです。従って鉱山はモリア、猿人はオーク、テルミヌス・エストはガンダルフの剣グラムドリングということになります。ウルフはトールキンの「指輪物語」の熱心なファンのようで、"The Best Introduction to the Mountains" というエッセイで「指輪物語」とトールキンへのオマージュを語っています。
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