ultan.net: 登場人物

Last Updated:

05/25/2002




アバイアの女奴隷 Odalisque of Abaia

アバイアに仕える女奴隷。アバイアの花嫁、水の精(ウンディーネ)とも言われます。若い頃は普通の人間と見分けがつかず、陸上でも暮らせますが、成長するにつれて巨大化し、陸上では自分の体重を支えきれなくなって水中のみで生活します。「拷問者の影」の冒頭、ギョルの船着き場で水遊びをしていた溺れかけたセヴェリアンを、アバイアの女奴隷の一人が助けます。

暗闇がわたしを包んだ。その暗闇から一つの女の顔が現われた。月の緑色の顔のように幅の広い顔が。泣いていたのは彼女ではなかった――すすり泣きの声はまだ聞こえていたが、その顔には苦悩の跡はなく、実際には、筆舌に尽くしがたい美しさに満たされていたから。彼女の手がわたしのほうに差し延べられた。わたしはすぐに雛鳥になった。彼女の両手はそれぞれ、わたしが時々休息する秘密の霊廟の棺ほどの長さがあった。その手がわたしを掴み、引き上げ、そして、彼女の顔とすすり泣きから引き離すようにして、下の暗闇の中に投げ落とした。わたしはついに底の泥らしいものにぶつかり、それを突き抜けて、黒に縁取られた光の世界に飛びこんだ。--「拷問者の影」第2章

その後も彼女はセヴェリアンの夢の中に現われて謎めいたメッセージを伝えようとします。

わたしがそばに落下していくと、それらは顔を上げてわたしを見た。それらの顔は、かつてギョルの下流で見たような顔だった。それらは女で、裸体だった。海の泡のように緑色の髪、珊瑚の目、彼女らは笑ってわたしの落下を眺めており、その笑い声が泡になってぶくぶくとわたしのところに上がってきた。その歯は白くて尖っており、それぞれ指ほどの長さがあった。(中略)

「わたしたちはアバイアの花嫁だよ。アバイアの恋人、遊び相手、玩具、友達さ。陸地はわたしたちを支えることができない。わたしたちの乳房は破城槌。尻は雄牛の背骨を折る。わたしたちはここで食物を食べて、漂いながら成長し、しまいにアバイアと夫婦になることができるまでに大きくなる。そして、アバイアはいつか陸地をむさぼり食う」--「拷問者の影」第15章

さらにネッソスにむかう旅の途中では、セヴェリアンを求めてはるか海から離れた小川までやって来ます。その目的は、セヴェリアンを主人であるアバイアのもとに連れ帰ることです。

一つの顔が水を透してわたしを見た。それはバルダンダーズを玩具扱いするほど巨大な女の顔だった。その目は真っ赤で、口はほとんど黒に近い真紅の厚い唇に囲まれていたので、最初はまったく唇とは思えなかった。その奥に無数の尖った歯が生えていた。その顔を額縁のように取り巻いている緑色の触手は水に漂う彼女の頭髪だった。--「調停者の鉤爪」第27章

水の精は、話しながら、ゆっくりと顎を上げ、頭を後ろに倒していき、しまいに顔全体を水面下すれすれに水平にした。白い喉がそれに続き、それから真っ赤な乳首のついた乳房が水面に現われ、その側面を漣が洗った。水中に無数の泡がきらめき、数呼吸のうちに彼女は、雪花石膏のような足から、もつれた頭髪まで、少なくとも四十キュビットはある巨体を伸ばして、流れに漂った。--「調停者の鉤爪」第28章

ちなみに1キュビットは約18インチなので、40キュビットは720インチ、つまり約18.3メートルになります。人体の比率が普通の人間と同じだとすると、顔の長さだけでも2.5メートルくらいになります。にもかかわらずこの水の精は美しく、セヴェリアンを強く惹きつけます。

≪あなたはまだ気づいていないけれど王冠を持っているのよ。多数の海を泳ぐわたしたちが――星々の間の海さえ泳ぐわたしたちが、単一の瞬間に閉じ込められていると、あなた思う?わたしたちはあなたの未来の姿を見ているし、過去の姿も見ているのよ。ほんの昨日もあなたは私の掌のくぼみで寝たのよ。そして、ギョルの中で死なないように、固まった水草の上に持ち上げて、この瞬間のためにあなたを救ったのも、わたしだったのよ≫--「調停者の鉤爪」第28章

セヴェリアンがヴォダルスの生命を救うその日に、ギョルで溺れかけた彼を救い、またスラックスに向かう旅の途中の川でセヴェリアンを篭絡しようとする水の精―― Juturna という名前です――は、さらに "The Urth of the New Sun" ではアバイアの思惑とは別に、彼女自身の意志によりきわめて重要な役割を果たします。

ところでアバイアの女奴隷の手を見たセヴェリアンは、茶色の本の中の「学生とその息子の物語」(「調停者の鉤爪」第17章)に出てくる食人鬼の手と同じだ、と考えます。それでは食人鬼はアバイア、もしくはエレボスと同じ種族なのでしょうか。サイリアカの話(「警士の剣」第6章)によると、茶色の本(およびウルタンの図書館に収められた多くの本)は、失われた知識を記したものなので、食人鬼の物語が事実に基づいているというのは、おおいにありそうなことです。食人鬼に捧げられた "穀物の乙女" のなれの果てがアバイアの女奴隷になるのかもしれません。またハルヴァードの故郷の南の島を襲うエレボスの船も同じ目的を持っているのかもしれません。

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