ultan.net: 登場人物

Last Updated:

07/07/2002




食人鬼 ogre

「茶色の本」の中の「学生とその息子の物語」の登場人物。魔法使いの町から毎年<穀物の乙女>たちを、自分の迷路の島に生贄として奪い去ります。ギリシア神話のミーノータウロス、ミーノース王、およびダイダロスに相当します。また<夜>を犯してノクチュラ姫を産ませたとの設定からは、<カオス>の子で「幽冥界」を象徴する<エレボス>であるとわかります。

「その名前はだれも知らない。だれもそばへ寄ることができないからだ。姿はナヴィスカプトの形をしている。つまり、そいつは人間には、船の形に見え、そのデッキ――実はこれが肩なのだが――の上に一つの櫓が乗っている。これが頭だ。この櫓に一つの目がついていて、身体はエイやフカとともに深い海中を泳いでいる。腕は、最も高い船のマストよりも長く、足は海底にさえも届く杭のようだ。--「調停者の鉤爪」第17章

ウールスの冷たい海に住むエレボスが本当にこのような姿をしているのかどうかははっきりしていません。以下の部分からは、この食人鬼の姿が一種の文学的比喩であることが示唆されています。

作者は、神話的な設定として、エレボスかアバイアのような海の悪鬼の必要を感じ、それに船のような頭を与えた――これが目に見える彼の体のすべてであって、残りは水中にある――だから、原形質を持つという現実が、この悪鬼から除去されて、作者の魂のリズムが要求する機械になるのである。--「独裁者の城塞」第26章

ただしここで注意しなければならないのは、通常の小説においてこのような比喩が用いられる場合、「通常の敵との戦闘」という現実の比喩として「海の悪鬼」が生み出されるのに対し、ここでは「原形質を持つ海の悪鬼」という現実に対して「機械」という文学的比喩が用いられていることです。この部分、つまり<原始性原理>についてはまた稿をあらためて考察します。

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