Last Updated:
04/21/2002
<最後の家>のアッシュ師にとっての<最初の女>(The first woman.)。
「できることなら、きみといっしょにいきたい。この扉の外に歩み出て、決して立ち止まらないで歩くことができればよいと、何度思ったことか」
名誉にかけて誓ってくれれば、すぐにでも束縛を解くつもりだと、わたしはいった。
彼は首を振った。「わたしがきみを裏切ると、考えたほうがよいかもしれないよ」
この意味はわからなかった。
「たぶん、どこかそのへんにヴィーネという女がいる。しかし、きみの世界はきみの世界だ。わたしの存在の可能性が高い時だけ、わたしはそこに存在できるのだ」--「独裁者の城塞」第17章
これだけではなんだかわからないので、原文を見てみます。
He shook his head. "You might think that I betrayed you."
I did not know what he meant.
"Perhaps somewhere there is the woman I have called Vine. But your world is your world. I can exist there only if the probability of my existence is high."
彼は首を振って言った。「きみはわたしが騙したと思うかもしれない」
わたしにはアッシュ師が何を言っているのかわからなかった。
「わたしがヴィーネと呼んだ女がたぶんどこかにいる。しかしきみの世界はきみの世界だ。わたしは存在確率が高いときのみ、そこに存在できるのだ」
アッシュ師がヴィーネと呼ぶ女は、おそらくアッシュ師にとっては存在のできない世界に住むのでしょう。それがセヴェリアン自身の属する世界なのかどうかははっきりしませんが。アッシュ師はヴィーネに恋焦がれながらも会いに行くことができず、ひょっとするとヴィーネのためにあえてセヴェリアンの求めに従うことにしたのかもしれません。
「わたしは孤独です、アッシュ師匠」わたしはあえて後ろを見ないでいった。「今まで、自分がどんなに孤独であるか、自覚していませんでした。あなたも孤独だと思います。ヴィーネという人はどんな女性ですか?」
おそらくわたしは、たぶん彼の声を想像したにすぎないのだろう。≪最初の女だ≫
「メシアンヌですか? ああ、彼女なら知っています。彼女はとても美しかったですよ。わたしのメシアンヌはドルカスでした。彼女がいないから、わたしは孤独なのです」--「独裁者の城塞」第18章
<最初の女>つまりメシアンヌとは、タロス博士の劇『天地終末と創造』の登場人物です。メシアンヌはメシアとともに、ウールスの後にあらわれるウシャスの最初の男女となりますが、それではアッシュ師にとってのヴィーネはどのような存在なのでしょうか。あるいはアッシュ師の氷に閉ざされた未来のウールスの創世神話中の登場人物なのかもしれません。
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