ultan.net: 登場人物

Last Updated:

07/07/2002




夢から肉化した若者 the young man who fleshed from dreams

「茶色の本」の中の「学生とその息子の物語」の登場人物。魔法使いの学生が自分の夢から生み出した存在です。

そこで、この学生が坐ったまま思いきって振り向くと、堂々たる風采の、肩幅の広い、筋骨たくましい若者が、目の前に立っていた。その引きしまった口には統率力が、その輝く目には知力が、そして顔全体に勇気が表われていた。額の上には、だれの目にも見えないが、盲人にさえも見えるあの王冠が載っていた。あの、英雄に勇者たちを引き寄せ、弱者をも勇敢にする王冠が。--「調停者の鉤爪」第17章

学生の夢から生み出された若者は、やがて毎年食人鬼への生贄として町から奪われる<穀物の乙女>たちを救うべく、街の若者たちの指揮官となって食人鬼の島に向かいます。若者の一行は、食人鬼の娘ノクチュラの助けを借りて激しい戦いの末についに食人鬼を倒します。ノクチュラと<穀物の乙女>を連れて一行は魔法使いの町に帰りますが、船が黒い帆を張っていたために学生は若者が死んだと誤解して自殺します。

このように若者はミーノータウロスと戦ってクレーテーの迷宮から生贄の若者たちを救い出すギリシア神話中のテーセウスの役割を演じます。また若者が学生の夢から肉化されるくだりはホルヘ・ルイス・ボルヘスの「円環の廃墟」にならっているものと思われます。一方「新しい太陽の書」の物語中の説明としては、マルルビウス師らと同様、人の思考・記憶から生み出される存在、アクアストルなのだと思われます。

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