イントロダクション

Last Updated:

09/04/2005




「新しい太陽の書」について

「新しい太陽の書」とは、米国の作家ジーン・ウルフ (Gene Wolfe) の書いたSFシリーズの題名です。原題は "The Book of the New Sun" です。日本ではシリーズ第四作までが早川書房から翻訳出版されましたが、残念なことに現在は版元品切れとなっているようです。

物語の始まりは、現在から数万年~数十万年後の、<ウールス>と呼ばれる地球の南半球、おそらく今の南アメリカ大陸とおぼしき場所にある、<共和国>の首都ネッソスの<城塞>と呼ばれる地域です。かつて人類は恒星間に強大な帝国を築いていましたが、今では昔日の面影はなく、資源の枯渇した故郷の世界で細々と終末の時を迎えようとしています。人類の力が衰えた原因の一つは、<古い太陽>が病み、そのエネルギーが衰えていることです。ウールスの人々は、いつか<調停者>と呼ばれる存在が現われ、ウールスに<新しい太陽>をもたらしてかつての栄光を取り戻すことを切望しています。

主人公のセヴェリアンは、「真理と悔悟の探求者の結社」通称「拷問者組合」の徒弟です。拷問者は、<共和国>の独裁者の命を受け、罪人に残虐な拷問をおこない、また処刑することを生業としているため、一般大衆の恐怖の的であるとともに忌み嫌われています。セヴェリアンはふとしたことから組合を追われることになり、ネッソスの外の世界に旅立ち、さまざまな奇妙な人々と出会い、やがて自分自身がウールスに<新しい太陽>をもたらす運命にあることを知ります。

この物語は、あらすじだけ読むと、エキゾチックな異世界を舞台にした、ありがちなサイエンス・ファンタジーのように見えますし、また実際そのように読んで楽しむことも十分に可能です。しかし注意深く読めば読むほどに幾層にも重なり合った意味の層があらわれてきて、随所に張り巡らされた伏線や引用の数々に驚かされます。例えば、万華鏡のようにあらわれるきらびやかなイメージ、アラビアン・ナイトやギリシア・ローマ神話を思わせる物語内物語、うっすらと暗示される人類とウールスの超未来史、あちらこちらにあらわれる哲学的思索、いささか唐突に表出するセックスと暴力、ゾロアスター教やカバラを思わせる神秘主義、さらにはワイドスクリーンバロック的な宇宙のサイクルとタイム・トラベルなどがここにはあります。

正直、この物語は読み解くのにいささか骨の折れる作品かもしれません。しかし、一度読んでみて気に入ったならば、できればもう一度最初からゆっくり読み直してみてください。あなたにとってこの作品がもしも「黄金の書」であるならば、おそらく初読時よりも二読目、二読目よりも三読目の方がより大きな歓びが得られることでしょう。

各巻のあらすじなど

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